1月17日、皇居では天皇、皇太子、秋篠宮の三者会談が、約1時間にわたり行なわれた。生前退位にかかわる天皇家の最終的な意思を確認する話し合いだったといわれている。
三者会談の後、天皇家には「御代替わり(みよがわり=皇位継承)」に向けた新たな動きも始まった。皇太子は今年2月19日に札幌で開幕するアジア冬季競技大会の開会式に天皇の「ご名代」として出席し、開会宣言を行なう。
天皇・皇后はベトナム訪問(2月28日から約1週間)を控えていることから、「極寒の北海道から10日足らずで熱帯のベトナムへのご移動となれば体調がご心配」(宮内庁関係者)という判断があったとされる。ただし、宮内庁OBの見方はやや異なる。
「両陛下のご体調への配慮があったのはもちろんでしょうが、主催者側が陛下の出席を依頼するなか、病気療養や手術入院など日程的に支障が生じているわけではないのに名代を立てるのは異例です。今回、陛下があえて皇太子に冬季アジア大会の開会宣言をお任せになるのは、生前退位に向けてご公務を皇太子に託していくというお気持ちの表われと推察されます」
秋篠宮にも重要な公務が“委譲”された。3月11日に国立劇場で開かれる東日本大震災六周年追悼式典だ。
追悼式は昨年までの5年間、天皇、皇后が臨席し、「被災地の一日も早い復興を願われ、被災地慰問を重ねてこられた両陛下にとって特に思い入れが深いご公務」(前出・宮内庁関係者)といわれる。それをあえて欠席して次世代皇族に任せるという決断が、「皇室は生前退位の準備を粛々と進めている」(前出の宮内庁OB)と受け止められている。皇室制度に詳しい小田部雄次・静岡福祉大学教授が指摘する。
「皇太子が冬季アジア大会で陛下のご名代を務められるのも、“次の陛下”となられる皇太子の予行演習や国際的な顔見せという意味を含めて、天皇家が退位に向けての“実績”を積み上げようとしているように見えます。しかし、天皇家がそうしなければならないのは、政治が皇室の問題に真剣に向き合おうとしていないからではないでしょうか。
政権側に“退位の詳細は政府で決める”という意識があり、皇室とのコミュニケーションがとれていないように見える」
写真■日本雑誌協会代表取材
※週刊ポスト2017年2月10日号