不正会計問題からの再建途上にある東芝に、さらなる巨額損失がのしかかり、いよいよ同社は解体の危機を迎えている。かつて、日本を代表する電機メーカーに晴れて入社した社員たちは、想像もできなかった難局を目の前にしている。彼らは今、何を思うのか──。
興味深いのは、連結19万人の社員たちの混乱ぶりに濃淡があることだ。社内での立場によって境遇、先行きが大きく異なるからだろう。
たとえば、すでに行なわれた事業売却でも、「工場の隣のラインにいた人と全く別の境遇になる」といった状況が生まれた。
2015年12月に東芝は大分工場のスマートフォン向け画像センサー(CMOSセンサー)の生産設備をソニーに売却、開発担当者など1100人がソニーの子会社に転籍した。一方、同じ大分工場の残りの部門は岩手東芝エレクトロニクスと統合されて新会社(ジャパンセミコンダクター)となった。昨年、東芝を退職した40代技術者がいう。
「社員に選択肢はなく、その時の所属によって自動的にソニー子会社に行くか、統合新会社に行くかが決まった。東芝傘下の新会社に行った社員は、年収が100万円以上減った人もいると聞きます」
そうしたなかで「他社に売られた部門が羨ましい」との声が少なくないという。2015年12月に早期退職募集に応じ、転職した50代の元部長クラスがいう。
「昨年末にいろんなところに散った同期が集まる機会があったが、明暗が分かれていた。キヤノンやソニーの傘下に移った連中のほうが明るい顔で、東芝に残った連中はボーナス50%カットなどもあって辛い顔をしていましたよ」
実際“他社に買われた部門”の社員の待遇は悪くないようだ。昨年12月19日にキヤノンの子会社となった東芝の医療機器子会社「東芝メディカルシステムズ」の広報はこういう。
「賃金など待遇、勤務地も含めて、以前の(東芝傘下時代の)体制とまったく変わりはありません。当面は社名も維持しながら事業を継続します」