米国のドナルド・トランプ政権の誕生で日本の外交環境も激変しつつある。その中で日本外交は何を目指すべきか、大前研一氏が解説する。
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日本政府は戦後70年以上、外交関係について整理することをおろそかにし、国民をごまかし続けてきた。それを根底から見直して世界の国々との付き合い方をゼロベースで組み立てるべきであり、そのことこそが国益につながるのだ。
トランプ大統領の登場は、その絶好のタイミングである。なぜなら、トランプ大統領は外交も過去の歴史やしがらみにとらわれず、ビジネスと同じ「ディール」と考えているからだ。
では、日本が「真の独立国家」になるためには、何が必要なのか? 私はリーダーの「人間力」だと思う。
「国防軍」を作って独自の軍事力を持てば、「真の独立国家」になれるという意見もあるが、それは間違っている。日本が保有している兵器の大半はアメリカの技術によるものなので、その継続的な運用については結局、アメリカに頼らねばならないからだ。
日本は、かつて中曽根康弘首相がレーガン大統領との「ロン・ヤス」関係によって「日米イコール・パートナーシップ」を確立した。その時のように、安倍首相がトランプ大統領と本当の信頼関係を築いて対米関係を定義し直し、沖縄をはじめ横須賀、横田などの在日米軍基地の問題をどのように日本国民が納得のいくかたちで解決・再編していくのかということを、真剣に話し合わねばならない。
事実上、自衛隊の指揮権を米軍に委ねている「日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」についても、全面的に見直すべきである。
そのためにはリーダーの「人間力」が不可欠だ。しかしそれは、選挙で勝つことだけを考えてきた政治家や、アメリカン・スクールやチャイナ・スクールで育ってきた外務省の官僚(およびそのOB)には備わっていない。
日本が「真の独立国家」となるために、トランプ大統領やプーチン大統領らと対等に渡り合えるリーダー(もしくは外交を補佐する専任アドバイザー)の登場を期待したい。
※SAPIO2017年3月号