えっ、なんで高速道路に自転車のじいさんが──!? 本誌記者が驚愕の体験をしたのは1月中旬、京阪神を網羅する都市高速・阪神高速道路でのこと。その日は大阪から京都へカメラマンの運転する車で取材に向かう途中だった。
渋滞もなく順調に車を走らせ、豊中南ジャンクションから名神高速に入ろうと左へカーブする道へ入ったその時、前方の車がブレーキを踏みながら右にハンドルを切った。直後に路側帯に見えたのは、自転車に乗って高速を逆走する初老の男性の姿だった──。
一瞬、何が起きたのかわからなかったが、どうやら豊中南出口を逆走して入ってきた自転車のようで、そのまま大阪方面に走り去っていった(写真はドライブレコーダーの映像)。
助手席に乗っていた記者は慌ててスマホで阪神高速の事務所の連絡先を検索し、電話で情報提供するのが精一杯。一人で運転していたら、それさえできなかった。
後日、阪神高速に改めて取材すると、「複数の方から連絡をいただき、パトロールカーが現場に急行。自転車の男性を無事保護しました」(広報担当)との答え。
驚くべきことに阪神高速全線(273km)では2015年度、自転車、歩行者、原付の不法行為(逆走)が307件もあったという。1日約1件弱のペースだ。
「防止策として高速出口に進入禁止の看板や標識、あるいは音や光で警告する設備を整備中です。自転車で高速に入ることは不法侵入にあたるため、今回の男性はそのまま警察に身柄を引き渡しました」(同前)
ちなみに高速道路で逆走する自転車をはねてしまった場合どうなるのか。弁護士法人フェニックスの伊藤博弁護士の解説。
「高速道路を逆走した『自動車』と接触した場合は、10対0で逆走した側の過失ですが、それが人間の場合は8対2という判例があり、自転車ならもう少し逆走した側の過失が重くなるだろうが、それでも10対0とはならない。法定速度を守り、不測の事態を常に想定して、注意を怠らず走るしかない」
背筋の寒い話である。
※週刊ポスト2017年2月10日号