著名人の半生を描く日経新聞「私の履歴書」で、日産自動車CEO(最高経営責任者)、カルロス・ゴーン編が1月31日に終わった。最終回の冒頭に、業界関係者は衝撃を受けた。
〈日産自動車を退任した後はどうするか、とよく聞かれる。私が退任した後も、日産とルノーのアライアンス(提携)は続けていけるか、という質問も多い。後者については、もちろんイエスだ〉
日産とルノーが資本提携した1999年以来、20年近くの長きにわたりトップに君臨してきたゴーン氏が、自身の引退を匂わせたのだ。
佃モビリティ総研代表の佃義夫氏は、「いよいよか」と感じたという。
「近年、ゴーン退任は噂されてきましたが、昨年、三菱自動車を傘下に入れ、目標とするグループで年間販売台数1000万台が見えてきた。目標が達成されれば、フォルクスワーゲン、トヨタ、GMに並ぶ『ビッグ4』の一角に入ることができる。もともとGMのトップを狙っていたといわれるゴーン氏にとっては、ひとつの大きな区切りとなる。退任は近いのかもしれません」
日産の次期トップには日本人が有力視され、注目度が高まっているが、では一方で、日産を去ったあとのゴーン氏は何をするのか。記事では〈計画も色々あるが、人生は計画通りにはならないものだ〉などと曖昧な書き方に終始している。前出・佃氏は、意外な予測をする。
「自動車業界関係者が口を揃えて言うのが、彼が狙っているのは『次のブラジル大統領』だということです。父親がレバノン系ブラジル人で、6歳までブラジルで育ち、思い入れがある。上昇志向の強い彼の野心を満たすにはそれぐらいしかないのではないでしょうか」(ゴーン氏はブラジルとフランスの国籍を有する)
すでにブラジル国内では「ゴーン大統領待望論」が持ち上がっている。昨年、ルセフ大統領が汚職で罷免されるなど政情不安にあり、経済も低迷している。そんななか、ゴーン氏率いる日産はリオ五輪のスポンサーとして約2億5000万ドル(約250億円)を拠出。大会に日産車4200台を提供し、ゴーン氏自身はブラジル出身者として聖火ランナーも務めた。
そんなことから「ブラジル経済を立て直すのはゴーンしかいない」という声が盛り上がっているのだ。ゴーン大統領が誕生すれば、日本とブラジルのアライアンスが実現するか。
※週刊ポスト2017年2月17日号