タクシー業界に高齢ドライバーが数多くいる現状を浮き彫りにした本誌・週刊ポストの前号記事(2017年2月10日号)は、業界に衝撃を与えたようだ。関西のタクシー会社幹部からはこんな電話があった。
「タクシー業界で年齢のことに触れるのはタブーで、書かれては困る。うちでは80代が2人いて、70歳以上が2割近くを占めますが、タクシーのドライバーは13日勤務しても、手取りが10万~20万円。“年金を受給しながら働く”というスタイルが定着している」
もちろん高齢ドライバーの中には、十分に健康で技術も地理にも習熟した人がいることを私たちは乗客としてよく知っている。もとより、ドライバーの雇用機会や収入の途を閉ざすことが記事の目的ではない。
しかし取材してみると、高齢ドライバーと乗客の安全に無自覚な会社が多いという印象は否めなかった。
警察庁によれば、70歳以上のタクシー・ハイヤー運転手による事故件数(平成27年)は2402件で、全年齢層の16.3%を占める。10年間で件数は約2倍、事故率は約3倍に上昇した。これはもはや社会問題なのだ。
この1月30日から、東京23区などでタクシーの初乗り料金が410円(約1kmまで)に改定され、タクシーはより身近な移動手段になるが、この高齢ドライバー問題についてタクシー会社側の反応は鈍く、前号では本誌アンケートに対する回答も少なかった。
そこで、改めて主要30社に質問項目を広げて再調査を行なった。回答があったのは30社中17社だった。
まず「70歳以上タクシー運転手は何人いますか?」という質問に対し、全回答企業の合計で70歳以上ドライバーは約430人だった。
普段見かけるタクシー運転手の印象からすると、少ないようにも感じられる。実際に、70歳以上の法人タクシー運転手は、東京に8130人(東京タクシーセンター登録)、大阪には5241人(大阪タクシーセンター登録)もいるはずなのだが、この差は何なのか。