「日本は円安に誘導している」「日本の自動車貿易は不公平だ」──トランプ大統領が、日本を標的にした“口撃”を繰り返している。日米貿易摩擦がピークであった1989年、石原慎太郎氏(84)は『「NO」と言える日本』(盛田昭夫氏との共著)を上梓し、アメリカ相手に日本の立場を堂々と主張した。石原氏が、トランプ大統領誕生をいち早く予言した盟友・亀井静香氏(80)とともに、再びアメリカに「NO」を叩きつけた。この2人が語り合った。
石原:日本の外務省には、アメリカと交渉する能力も度胸もない。外務次官ですら、ロクなのがいない。若泉敬(沖縄返還交渉に関わった国際政治学者)の弟子の谷内正太郎(元外務事務次官で現国家安全保障局長)だけはなかなか優秀だった。それでも私が都知事だったころに横田基地を取り戻そうと動いたら、さすがにビビって、「ペンタゴン(米国防総省)だけは刺激しないでもらいたい」と言ってきたからね。
東京の首都圏の中に日本で一番長い滑走路を持っている飛行場をアメリカが占有しているなんて、馬鹿な話ですよ。
亀井:石原さんはそれでも実現に動いたわけでしょう。政治家が腹を括ってやれば、たいていのことはできますよ。役人だってその覚悟を見極めたら、すぐに動く。
石原:政治家は恫喝されたら恫喝で返すくらいじゃないとダメだね。役人だって恫喝すれば動くんですよ。羽田空港を国際化したのは、私と亀井さんですよ。
亀井:二人で運輸省を恫喝したからね(笑)。
石原:亀井さんが政調会長のときに、運輸省の次官を呼び出してね。羽田に3本目、4本目の滑走路をつくるための調査費を10億円つけろと。調査費がついたら、もう決まりだからね。
亀井:アメリカとの交渉だってそう。相手をカウボーイと思って本気で撃つという気迫で、相手より速い手さばきを見せれば、相手も撃てなくなるんだよ。
石原 私もそう思う。特にトランプには「撃ち合ったらお前が怪我するぞ」という交渉が通じると思うんだけど、それが日本の政治家や外務省にはできない。
※週刊ポスト2017年2月17日号