「絶対にこんな選考結果はおかしいですよ」──そう憤るのは30代の慶應大学OBだ。
3月19日に開幕するセンバツ甲子園の出場32校が決定。怪物スラッガー・清宮幸太郎が注目を集める早稲田実業(東京)などが順当に選出されたが、関係者の間で“想定外”と驚かれたのが早稲田の永遠のライバル・慶應(神奈川)の落選である。
「1月27日の選考委員会では東京・関東地区の最後の1枠をどうするかで最後までもつれた。同地区では昨秋の東京大会の優勝校(早稲田実業)と関東大会ベスト4(作新学院=栃木、前橋育英=群馬、健大高崎=群馬、東海大市原望洋=千葉)は文句なしの選出。残り1枠を東京大会で準優勝した日大三高と、慶應を含む関東大会のベスト8の4校が争うかたちになった」(高野連関係者)
慶應OBをはじめ関係者の間では、「(関東大会に先立つ)神奈川大会を制したのだから選ばれるはず」と2009年春以来の甲子園への期待が高まっていただけに、日大三が選出されると決まった時の落胆は深かった。
出場校決定後の会見では、選考委員長がわざわざ、「慶応も総合力が高くて迷った」「日大三は(東京1位の)早実よりも力が上かもしれない」と言及。“本当に惜しかった”というニュアンスが強調された。それだけに、冒頭の慶應OBのような恨み言も飛び出すわけだが、首を傾げる向きもある。スポーツ紙担当記者の解説。
「日大三の選出は順当でしょう。東京大会決勝で清宮から5打席連続三振を奪ったエース・桜井周斗は最速144kmのストレートと切れ味鋭いスライダーを武器にする高校屈指の左腕です。
慶應は話題先行で有力候補扱いになっていた面が強い。早慶が甲子園揃い踏みすれば56年夏以来のことになります。両校が勝ち進んで史上初となる“甲子園での早慶戦”が実現すればかつてない盛り上がりとなるのは間違いない。しかも今回は早稲田側に大会ナンバーワンの注目度の清宮がいますから。
冷静に秋の成績を見れば、慶應は関東ベスト8といっても、センバツに最も近い『優勝校に負けたベスト8』ではない(関東大会優勝の作新学院に負けたベスト8校は中央学院=千葉)。選考委員をはじめ関係者に慶応OBが少なくないから、話が盛り上がっただけでしょう」
とはいえ神奈川を制した実力はある。夏は堂々と出場を勝ち取り、史上初の「甲子園の早慶戦」──そんな展開を高校野球ファンは待ち望んでいる。
※週刊ポスト2017年2月17日号