1970年代から日本でも議論が続く「安楽死」。途中、治療の見込みのない不治や末期の患者への死期を延ばすためだけの延命措置を拒否する、終末期における「尊厳死」という考え方が広まったが、いまだ法整備はすすまない。以下は、日本国内の医療現場で起きた主要な「安楽死」事件である。
●東海大学付属病院・塩化カリウム注射事件(1991年)
末期がん患者(58)に、家族の依頼を受けた医師が塩化カリウムを注射し死亡させた。病院が明らかにし、医師は殺人容疑で送検。患者の意思表示がなかったため、1995年3月に有罪判決。懲役2年、執行猶予2年。
●川崎協同病院・筋弛緩剤投与(1998年)
気管支ぜんそくの重症発作で意識不明の患者(58)の気管内チューブを、家族の希望を受けて医師が除去。さらに筋弛緩剤を投与して死亡させた。4年後、内部告発により医師が逮捕。2009年最高裁が医師の上告を棄却。殺人罪で懲役1年6か月、執行猶予3年。
●北海道立羽幌病院・人工呼吸器中止(2005年)
心肺停止状態で運ばれてきた患者(90)に人工呼吸器をつけた翌日、家族の同意を得て呼吸器のスイッチを切った。3か月後、医師は殺人容疑で書類送検されたが、2009年に嫌疑不十分で不起訴処分に。
●富山県射水市民病院・呼吸器中止(2006年)
2000~2005年にかけて末期がん患者など50~90代の男女7人が、医師に人工呼吸器を外されて死亡。それぞれ家族の了解を得ていた。病院側の発表で発覚し、医師は殺人容疑で書類送検。しかし、遺族が処罰を望んでいないことなどから、2009年に不起訴処分となった。
※週刊ポスト2017年2月17日号