中国がカンボジアに国家予算の5%もの「爆援助」を行っている。その狙いは何か。ジャーナリストの安田峰俊氏がカンボジアの首都・プノンペンを歩いた。
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「成金風を吹かせて横柄な態度を取る人も多く、中国人は好きではありません。でも、彼らはどんどん増えるし、いろんな商売に手を出す。このままだと、国が中国に乗っ取られそう」
プノンペン市内の日系ホテルで働くカンボジア人女性(21)はそう打ち明けた。
事実、現地で中国経済の存在感は大きい。2015年、中国からカンボジアへの投資額は2億4100万ドルに達し、各国別シェア1位の30.7%を占めた。いっぽう日本の投資額はわずか3900万ドルで、中国の6分の1以下だ。日本貿易振興機構(JETRO)の現地幹部が「まったく勝負になっていない」と認めるほど、中国の一人勝ちとなっている。
街では中国資本の高層マンションの建設が進む。簡体字の看板が乱立し、まるで中国内地の地方都市のように見える地区すらある。
「カンボジアはチャンスの宝庫、20年前の中国と同じです。進出助成金や2国間の関税優遇措置など中国政府のバックアップも大きく、現地の華僑も多い。中国人が進出しやすい環境がすべて整っています」
現地で中国語ニュースサイトを手掛ける劉鴻飛氏(31)はそう胸を張る。事実、内戦終結から現在までの約25年間で60万人以上の中国人が大挙してカンボジアに流入した。
彼らは土着の華僑と結びつき、カンボジア当局とのパイプを作り上げている。米国留学歴を持つカンボジア政府関係者のK氏(41)が、日中両国の企業の違いをこう話す。
「日本企業は仕事は丁寧だが、意思決定があまりに遅く融通も利かない。いっぽう中国企業は迅速で柔軟だ。許認可の担当大臣に高級車を何台も送り、行政手続きをスムーズに進めるくらいは朝飯前。政府機関のビルをひとつ建てるなら、受注価格の半額は役人への賄賂に充てる。中国企業が勝つのは当たり前だよ」