日本ではいまだ法整備がすすまない「安楽死」だが、世界では先行して実践、研究がすすんでいる。
安楽死は、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」のふたつに分類される。前者は「医師が薬物を投与し、患者を死に至らす行為」。後者は「医師が治療を開始しない、または治療を終了させ、最終的に死に至らす行為」と定義される。
そして、「安楽死」とは別に「自殺幇助」という方法による死に方もある。こちらも、安楽死同様、「積極的自殺幇助」と「消極的自殺幇助」のふたつに分けて考えられる。前者は、「医師が薬物を投与するのではなく、患者自身が投与して自殺する行為」。後者は「回復の見込みのない患者に対し、延命措置を打ち切ること」で、一般的に日本語で表現される「尊厳死」がこれに当たる。
いまだ世界中で議論が続く問題で、はっきりした正解を安易に求めることはできない。安楽死の認められていないスペインでは、事故で頚椎を負傷して全身不随になり、29年間寝たきりで過ごした男性の自殺を恋人の女性が幇助する事件が1998年に起きた。
亡くなった男性の兄は宮下氏に対し、「彼女を許すことはできない。あれは犯罪だ」と断言した。
「この兄は、『自分が安楽死するのはいいが、家族に許してはダメなんだ!』ともいいました。実際、安楽死を選ぶのは、子供がいなかったり配偶者に先立たれた患者というケースが非常に多い」(宮下氏)
東京大学大学院死生学・応用倫理センター特任教授の清水哲郎氏が死と向き合う際の「本人と家族に求められる姿勢」を解説する。
「“死なない、死なせない”と死を引き延ばすだけでは、本人にも家族にも悪い影響を与えることがあります。人生の最期をよりよく過ごす方法について、本人と家族ができるだけ話し合うことが求められます」
※週刊ポスト2017年2月17日号