〈国の借金は1000兆円を超え、対GDP比で見ると先進国で最悪、ギリシャより悪い。増税して財政再建しなければ、日本は遠からず破綻してしまう〉
これが財務省の主張であり、「借金1000兆円」と聞けば国民は“やばいんじゃないか”と思う。多くのマスコミも鵜呑みにして国の経済危機を報じてきた。だが、「それは真っ赤なウソ」と指摘するのは、元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授だ。
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最初にはっきりさせておこう。財務官僚には「財政再建」などまったく興味がないし、本気でやるつもりはない。
それなのに財政危機を煽るのは、もちろん増税したいからだ。しかし、その場合の増税とは、消費税などの「税率」アップのことで、「税収」アップではない。税率さえ上げれば、実際に税収が増えるかどうかは二の次なのである。
財務官僚の真の狙いは、彼らの省益である「歳出権」の拡大にある。国会で予算が成立すれば、役人にこれだけの金額を使っていいという権限が付与される。財務省はこの「歳出権」を各省に配分することで、霞が関で強大な力を持っている。この財務省の歳出権は「税収」ではなく、「税率」を引き上げることで初めて強まるのだ。カラクリを説明しよう。
国の予算には税収などの収入がいくら見込めるかの「歳入予算」と、見込まれる収入を何に使うかの「歳出予算」がある。このうち国会の議決(承認)によってチェックされるのは歳出予算だけで、一方の歳入予算は、単なる「見込み数値」に過ぎない。
政治家は、国民に不人気な増税は、できればやりたくない。そのため、財務官僚は増税法案を国会提出させるために与党議員を説得し、国会審議では野党にも根回ししてフルに動く。増税法案が成立すれば与党からも霞が関の各省からも財務官僚の功績と認められる。