三菱商事は2月2日、2017年3月期の連結最終損益が4400億円の黒字になる見通しだと発表した。従来予想の3300億円を1100億円上回る、2度目の上方修正となる。これによって今期の黒字転換により、三菱商事は商社トップの座を奪い返す見込みだ。また前期は初の赤字決算となった三井物産は2月8日に決算を発表し、連結最終損益は3000億円だった。当初予想を800億円も上回る大幅な上方修正だ。
これは単に一企業の回復にとどまらない。かつて資源部門に偏っていた商社の業務は事業経営にシフトしつつある。成長しそうな企業に出資して経営に携わり、優れた技術を見つければ会社を設立して事業化する。三菱・三井が復活に伴いそうした動きを活性化していけば、日本経済全体への好循環が期待できるのだ。
1870年に岩崎弥太郎が創業した三菱は「組織の三菱」と称され、グループに属する企業は600社以上に達する。中興の祖とされる岩崎小弥太が示した経営理念「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」は「三綱領」として重宝され、1世紀以上過ぎたいまもグループ内に引き継がれている。
1673年に三井高利が興した三井は「人の三井」と呼ばれ、チームよりも個を重視する経営方針で成長した。トヨタ自動車は豊田章男社長が三井家と縁戚関係ということもあり、三井の社長会にオブザーバーとして参加している。
こうした「結束力」が日本経済の追い風となる。カブドットコム証券マーケットアナリストの山田勉氏が指摘する。
「日本を代表する2大財閥の三菱と三井はそれぞれ月1度、グループ企業のトップが集う社長会を開いています。その場でトップ同士がビジネスで連携する交渉をして、大小様々な情報交換や意見交換を行ないます。非財閥にはない結束力が彼らの力の源泉です」