どんな名選手にもケガはつきものであり、それだけに、ケガからの復活劇は球史に残るドラマを生む。ただ、あまりに“白々しい演出”だと見ているほうが冷めてしまう。
キャンプイン以降、ソフトバンクの松坂大輔(36)は「完全復活への超スピード調整中」、日本ハムの斎藤佑樹(28)は「開幕投手候補」などと報道が過熱。スポーツ紙は競うように2人のブルペンでの様子を報じ、“今年は違う”と大絶賛している。
かつて甲子園や米大リーグで快投を見せた2人も、近年の“期待外れ”ぶりは野球ファンであれば誰もが知るところだ。実際、プロの目にはどう映っているのだろうか。野球評論家の江本孟紀氏はこう評す。
「松坂の復活? 斎藤の開幕投手? ありえんでしょう。マスコミが盛り上げているだけですよ。たしかに松坂は昨年に比べれば左足を大きく踏み出せていますが、フォームは固まっていないし、制球力もない。痩せたといっても昨年に比べてのことだからね……。斎藤は海外キャンプなので直接見てはいませんが、はっきりいって、キャンプの第1クールが終わったぐらいで、復活できると判断する人の気が知れません。
最近のスター選手は口も重いし、スポーツ紙も話題がない。写真で変化を見せようとするから、痩せた松坂や背番号が変わった斎藤の話題になるわけです」
完全な“話題先行”だという指摘である。両チーム担当記者はこんな言い方をする。
「松坂は年俸4億円3年契約の最終年。この2年は全く働きませんでしたから、アピールしないとマズいのは事実です。しかし、若手やリハビリ組が中心のB組スタート。体調が万全ならA組になるはず。工藤(公康)監督も“紅白戦、オープン戦でしっかり投げてもらわないと……”と話していますが、記事中でそこには触れない」(ソフトバンク担当)
「斎藤の背番号変更は、栄光の高校時代の番号が1番だからといっていますが、実際にはエース番号『18』を返上したということのようです」(日本ハム担当)
2人が在りし日の勇姿を思い出させてくれる日は、もう来ないのだろうか。
※週刊ポスト2017年2月27日号