ドナルド・トランプ米大統領は、雇用増大や移民排斥など、選挙中に繰り返していた公約の実現に邁進中だ。どれも大衆の人気を得るにはもってこいだったが、果たして実現可能なのだろうか? 経営コンサルタントの大前研一氏が、トランプ大統領の今後について以下のように展望する。
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トランプ大統領は就任前の記者会見で「8年後、自分が事業に戻った時に息子たちがちゃんとやっていることを祈る」と言っていたが、私は8年後までトランプ氏が大統領の椅子に座っていることは不可能だと思う。
トランプ大統領に指名された閣僚やアドバイザーたちの中には、金銭的な面から見てもプライドの面から見ても、おそらくトランプ大統領の言いなりにはならない人物が少なからずいるだろう。実際、すでにジェームズ・マティス国防長官は、トランプ大統領がテロリストなどの尋問手段に「水責め」などの拷問を復活させる考えを示したのを否定し、断念させている。
あるいは、トランプ大統領が出した中東・アフリカ7か国からの入国を禁止する大統領令に対して、抗議デモが続発し、全米15州と首都ワシントンの司法長官が共同声明を発表して「違憲だ」と非難した。
この先、石油メジャー最大手エクソンモービルのCEO(最高経営責任者)だったレックス・ティラーソン国務長官や、ボストン・コンサルティング・グループ出身のウィリアム・ハガティ駐日大使らは、ドメスティックな不動産業界しか知らないトランプ大統領とは異なり、グローバルビジネスの現場で培った自分自身の感覚で動き始めると思う。
そうなれば結局、トランプ大統領は自分がホストを務めていたテレビ番組の名ゼリフと同様に「お前はクビだ!(You’re Fired!)」を連発するか(すでにサリー・イエーツ司法長官代理が大統領令の合法性に異論を唱えて解任された)、逆に、閣僚らのサボタージュを招くだろう。