スーパーの商品棚を眺めていて、特に驚くのが惣菜類の安さである。例えば、東京・板橋区のスーパーでは、鶏のから揚げが100g・98円(ゴルフボールサイズで3個入り)で売られていた。なぜこれほど低価格で売り出せるのか。同店の店員が、こっそりと明かす。
「実はこのからあげ、昨日まで精肉コーナーで『鶏もも肉』として100g・138円で売られていたものなんです。消費期限が近くなって、20%引きしても売れなかったもの、つまり本来であれば捨てるはずの鶏肉を再利用している。だから調理時にかかる小麦粉や卵などの材料費、人件費を合わせても安く提供できるんです」
スーパーにとって、惣菜コーナーは消費期限切れの生鮮食品を“再利用”する重要な役割を持っている。消費者問題研究所代表で、食品表示アドバイザーの垣田達哉氏が解説する。
「食品衛生法で、『品質の劣化が急速』とされる食品には、消費期限を表示することが義務づけられています。
この消費期限は製品の保存試験などの結果に基づき、科学的・合理的な範囲で製造者が自由に決めることができるのですが、一度ラベルに表示した消費期限を勝手に変更することは認められていません。
そのため、消費期限が迫るとスーパーは加工したり調理して“別の商品”にしてしまう。たとえば鶏もも肉なら、から揚げにすることで『生鮮食品』から『加工食品』に生まれ変わる」
“延命治療”が施されるのは魚や野菜も同様である。
「たとえば、生食用としてサクで売られているマグロなどは、包丁を入れれば『刺身』という加工品になり、消費期限を延ばすことができる。それでも売れ残る場合は、細かく刻んで『ネギトロ』にする。野菜もカット野菜や天ぷらにすれば問題ない」(同前)
これらはすべて廃棄量を減らすことでコストダウンを図り、少しでも安く販売しようというスーパーの血のにじむ企業努力の一環なのだ。
※週刊ポスト2017年2月24日号