国際情報

日本 国の豊かさで2位、国民1人あたりの豊かさでは1位

日本には多くの強みがある

 近年、GDPで日本経済が語られる時は、常に悲観ムードが付きまとう。しかし、2012年発表の国連統計では、日本は世界一豊かな国だとされている。経済学者の福島清彦氏が、GDPだけでは測れぬ国の豊かさを解説する。

 * * *
 2011年4月の国連総会で国の経済規模を測る新しい統計についてのシンポジウムが開かれた。その結果、全会一致で国連統計局にこの新統計の開発を要請する決議が採択された。当時、世界の主要メディアはその画期的なニュースを大きく報じたが、日本の大手メディアはあまり触れなかった。

 翌2012年6月に発表された『総合的な豊かさ報告2012年』には、包括的な各国の福利厚生度=豊かさを示す3つの資本(「人的資本」「生産した資本」「天然資本」)の残高が計算されている。従来のGDPのように年間の経済成長でなく、経済発展の持続力が重視されているのが特徴だ。

 報告にある1990年から2008年まで18年間、20か国の統計では、日本は国全体の豊かさが米国に次いで2位、国民1人あたりの豊かさは、なんと米国民より13%も上回る1位だった。いったい日本の何が強かったのか。

 まず高い生産性につながる国民の教養・学力への投資を指す「人的資本」。日本は高校進学率は90%を超える。大学、短大、高専などの卒業率は56%で、30%ほどのEUに比べても日本は教育水準が高い。

 設備投資を含む「生産した資本」については、日本は50年近くにわたってGDP比約15%の設備投資を続けてきており、蓄積された資本残高が極めて多い上、高い生産性も見込めるのだ。

 日本が乏しいと言われる天然資源とほぼ同義の「天然資本」だが、これには木材用の植林や造成農地など生産のために人が手を加えた自然も含める。日本は決して高い値ではないが、農地の造成などは将来的な経済発展の持続可能性を持つ。逆に石油やガスの産出に依存している国は、年々天然資本を弱めているとも言える。

 国連の新統計はこれら3資本に加え、社会における人の繋がり、信頼関係を表す「社会関係資本」の4資本を豊かさの指標としている。現段階では標準的な統計が確立されていないので、指標として掲げているものの統計には含んでいない。このように1人あたりGDPで20位以下に沈む日本人が、一番の豊かさを持っている結果は驚きだ。

【PROFILE】ふくしま・きよひこ/1944年、兵庫県生まれ。一橋大学経済学部卒業。同大学院修了。毎日新聞社、野村総合研究所を経て、立教大学経済学部教授に。2010年から2015年まで同大学特任教授。著書に『日本経済の「質」はなぜ世界最高なのか』(PHP新書)など。

※SAPIO2017年3月号

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト