最近は、公の場に姿を現さなくなった創価学会名誉会長・SGI(創価学会インタナショナル)会長の池田大作氏(89)だが、いまだ学会会員たちから絶大な人気を集めている。50年以上にわたり学会を牽引した池田氏は、日本社会全体にどんな影響を与えたか。社会学者の玉野和志氏(首都大学東京 教授)が考察する。
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一般化するのは難しいですが、学会員にとっては田中角栄と同じと言えます。哲学者の鶴見俊輔も池田氏を「戦後の民主化を最も体現した人」と評しています。
戦後日本の民主主義は大衆によってダイナミックな動きを見せてきました。中層から上層に上昇した人に嫌われて、底辺の人たちから厚く支持された田中角栄や美空ひばりと、池田氏はよく似ていると私は考えています。
すなわち、学会活動の中で社会の底辺にいる人々を引き上げるシステムを作り上げ、“頑張れば何とかなる”という、日本の高度成長を支えた基本的なエートスを(田中角栄に続いて)体現したということです。
ヨーロッパや第三世界では、底辺にいる人たちは諦めて何もしないのが普通です。戦後の日本は、下層にいる人たちが地道に頑張る例外的な国でした。
現在までその成長神話は続いています。
今、池田氏は公の場に出ておらず、いずれ世代交代も起きると思いますが、彼が植え付けた「誰でも頑張れば報われる」というエートスは、その後もしばらく残るでしょう。
●いけだ・だいさく/1928年、東京都生まれ。富士短期大学卒。1947年、19歳で創価学会に入会。戸田城聖理事長(後の第二代会長)に師事。1960年、創価学会第三代会長に就任。1979年、同名誉会長。1975年、SGI(創価学会インタナショナル)会長。主な著書に、小説『人間革命』(全12巻)など。
【創価学会】1930年11月、牧口常三郎・初代会長と戸田城聖・第二代会長(当時理事長)によって創立される。戦中の政府による弾圧を経て、戦後に再建。現在、日本では公称827万世帯の会員がいる。日蓮の仏法を信奉している。
※SAPIO2017年3月号