アフガニスタンの著名な仏教遺跡群が眠るメス・アイナク地区で、中国の資源大手「中国冶金科工集団(MCC)」など中国2社が大規模な銅鉱山の開発を計画しており、開発が開始されれば、遺跡の多くは早晩破壊されることが予想されるため、アフガニスタンでは遺跡保護の運動が高まりを見せている。
これに対して、中国側は「アフガニスタン政府から開発許可は得ており、開発は計画通りに進める」などとしているのだが、「中国は目先の利益しか見えないのか」などと国際的な批判が高まっている。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
メス・アイナク仏教遺跡は首都カブールから南東へ40キロほどのところにある。紀元前3世紀から8世紀頃、アフガニスタン東部からパキスタン北西部にかけて広がっていたガンダーラ地方の仏教信仰の中心地で、寺院や多くの仏像仏画を含む仏教遺跡が残されている。
出土品は、塑像、木彫仏、石彫仏、壁画、宝飾品、古文書、コインなど千数百点にも及んでいるが、まだ整理されておらず、破損したままの状態で保管。アフガニスタン政府としては今後、国際機関の支援を受けて、修復計画を実行する予定だ。
だが、その一方で、メス・アイナク地区の地底には大規模な未開発の銅鉱床が存在していることも分かっている。
アフガニスタン政府は2007年、当時のカルザイ政権が窓口となって、MCCと江西銅業の中国の資源大手2社に30億ドルで、30年間有効の採掘権を売り渡している。
この銅鉱床の規模は長さ4キロ、幅1.5キロ以上もある巨大なもので、未開発の鉱床としては世界最大規模。銅の埋蔵量は1140万トンと推定されている。
中国側は今後、大掛りな露天掘りによる採掘を計画しており、それに伴って、道路や鉄道、発電所といったインフラを整備する予定だ。開発が始まれば、貴重な仏教遺跡が根こそぎ破壊されることは確実だ。
本格的な開発の開始に関しては、中国側とアフガニスタン政府の合意が必要で、いまのところ年内に両者の協議が始まり、早ければ来年にも銅鉱山の開発計画が始まるとみられる。考古学者らは鉱山開発で失われる前に調査を進めようと、地元で作業員を雇い発掘作業を進めている。
また、その一方で、国際的なメス・アイナク保護プロジェクトが立ち上がっており、イギリス紙「ガーディアン」や「エグザミナー」「サンデー・タイムズ」なども運動を支援するなど、中国による銅鉱山の開発計画に反対する動きも表面化している。