アメリカのドナルド・トランプ大統領は〈米国に工場を建設しないと、多額の関税を払わせる〉とツイッターでトヨタを狙い撃ちした。トヨタに関しては、「トランプに対する情報が不足していたのではないか」という指摘もある。発足当初だけに無理もない話なのだが、今後はますます海外情勢に対する分析力が企業の明暗を分けることになるだろう。『経済界』編集局長の関慎夫氏が指摘する。
「現代ビジネスは情報がすべてといっても過言ではありません。いち早く情報を入手したものが商機を得る、という構図です。その点で、財閥は中核企業の商社によって世界中にネットワークを張り巡らせています。さらに異業種のグループ企業間で情報共有が図られる回路もできあがっている。“不沈空母”とも称される所以であり、それは不透明な時代になるほど武器となる」
とはいえ、予測不能なトランプ政権だけに、標的となれば財閥系の企業がダメージを負う可能性はゼロではない。そのときにいかにしてその傷を癒すか。そこにこそ財閥の真骨頂があると経済ジャーナリストの松崎隆司氏は語る。
「財閥最大の強みは、メインバンクを中心とした『結束』という名のサポート体制です。巷間、東芝は“もう潰れる企業”との認識が広がっていますが、解体は進んでもそう簡単には潰れません。三井グループとしてメインバンクの三井住友銀行が支えるからです。國部毅頭取も、『可能な限りサポートする』と明言しています。
三菱自動車は日産傘下になりましたが、メインバンクの三菱東京UFJ銀行が10年以上も支えたという事実は重いし、今でも三菱自動車はグループを外れたわけではない。日産のカルロス・ゴーン社長も三菱グループに価値を見出しているからこそ、現在の社長を留任させたのではないか。そう簡単にグループ企業を見捨てないことが今も昔も変わらない財閥の姿なのです」
財閥の底力が試されている。
※週刊ポスト2017年2月24日号