寒い日が続くが、立春が過ぎて暦の上では春。4月の転勤、進学、就職シーズンを前に、引っ越し業界は繁忙期を迎えている。物件の入れ替わりが激しく、料金も値上がりするこの時期、上手にすませて、ステキな新生活を始めたい。そこで損をしない引っ越し術を、不動産のプロに聞いてみた。
退去時、預けていた敷金が戻ってくるのだろうか? 追加の修繕費用を請求されたらどうしよう? などと、退去時に不安になる人は多い。不動産投資コンサルタントの長谷川高さんは、「普通に生活していて汚れたり磨耗したりしたものは、基本的に大家負担」だと言う。
「国土交通省が公表している『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』には、経年劣化によるものは大家負担、故意過失によるものは入居者負担と定められています。東京都では条例で定められていますし、最高裁の判例もあります。もし契約書に何か特記事項が書いてあったとしても、普通の生活でついた汚れ、傷などは大家負担で、借りた人が新品同様に直す義務はありません。逆に、注意不足やわざと傷つけた場合は、入居者の負担になります」
例えば、キッチンの壁の油汚れ、画びょうの穴、家具の設置による床のへこみ、冷蔵庫の背面の電気焼けなどは、負担する必要はない。しかし、子供と遊んでいて壁や天井に穴を開けたとか、花瓶を落としてフローリングが傷ついた場合は、払わなければいけない。
また、意外と知らないのが、消耗品の負担だ。不動産サポートオフィス代表の秋津智幸さんが説明する。
「水道のパッキンやエアコンのフィルター、電球など劣化していく消耗品は、入居者負担となることが多い。ちなみに蛍光灯の電球の部分を取り換えても電気がつかないなら、本体の故障なので本体の修理は大家負担です。また、最近はたばこを吸う人も少ないので、ヤニで壁が茶色くなってクロスを全面取り換えする費用は、入居者さんの負担となるようです。クロスの全面取り換えはワンルームでも20万円以上かかります」
実際に、敷金をめぐって争いが起きた場合は、どうすればいいのか。
「かつては、原状回復費用は入居者負担で、敷金は全額もらうのが当たり前と考える大家もいましたが、今は前述のガイドラインがあります。通常であれば原則、全額が返ってくるはずですが、戻ってこない場合は『条例や国土交通省のガイドラインはご存じですか。それに沿っておっしゃっているんですか』と伝えてください。直接交渉しづらいのであれば、国民生活センター、もしくは、各都道府県に不動産の相談コーナーが設けられているので、相談するのもいいと思います」(長谷川さん)
無駄な費用を抑え、新しいスタートを切ろう。
※女性セブン2017年3月2日号