ついにあの噂の自動販売機が東京に上陸した。広島県江田島市にある二反田醤油が製造販売しているペットボトル入りのだし「だし道楽」である。フリー・ライターの神田憲行氏が取材した。
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「だし道楽」はあご(トビウオ)を焼いて取ったからだしと醤油をあわせたもので、ペットボトルに入れられて自動販売機で発売されている。ジュースとかお茶の感覚でいきなり道端で「だし」が売られているのである。その唐突さ、ペットボトルに「あご」が丸ごと一尾が入っているインパクトから、以前からネットでは広島土産として人気があった。
それが2月から六本木など東京都内4箇所に「出店」、突如現れた噂の自販機はSNSで話題になっている。
「おかげさまで毎日1台あたり30本前後売れています。予想を上回る反響で、ツイッターで検索すると毎日買っていただいたお客さんのつぶやきがあって嬉しいです。なんにも宣伝していないのに、ネットの口コミの力ってすごいですね」
と喜ぶのは、有限会社二反田醤油の専務、二反田圭児さん。
同社がだしをペットボトルに詰めて自販機で売り始めたのは10年前から。もともとは呉市内で直営しているうどん店で販売していたが、お店の営業時間が1日4時間しかなく、時間外でもだしが買いたいというお客さんの要望に応えて自動販売機を設置したという。
「自販機で販売するためにペットボトルの形状は一から設計しました。素材のあごを丸ごと入れたのは、見た目のインパクトとうま味がさらに出るという社長のアイデアです。ペットボトルには1本ずつ人の手で入れてます」
自販機というオートマティックな販売なのに作るときは1本ずつ手作業というのが泣かせる。ちなみにだしを使い切ったあとのあごは、オーブンで焼いて細かく砕けばふりかけとして食べられる。
自販機の設置は呉市から広島市内に広がり、観光客が広島土産として購入していくことに着目して、設置範囲を徐々に県外にも広げていった。現在は首都圏、中部、西日本の37ヵに38台を置いている。販売されているのは「だし道楽 焼きあご入り」(500ミリリットル・700円)と「だし道楽PREMIUM 焼きあご・宗田節入り」(同・750円)の2種類だ。
ちなみに設置場所は呉のうどん店以外はすべて駐車場になっている。会社は設置場所を探す必要が無く、駐車場側はデッドスペースの有効活用ができ、「ウィンウィン」のビジネスモデルになっている点も、なかなか商売上手である。
記者もさっそく目黒にある自販機で「だし道楽」を購入して、うどんを作って食べた。だしの色は薄くて見たときは「これで本当に味がするのかな」と心配になったが、飲んでみると上品な甘さで、舌にうま味がしっかり感じられる。
もともと焼きあごでだしを取るのは長崎県の食文化という。それを新商品開発で同社が瀬戸内に持ってきて、かつおだしとはまた違う風味がうけた。現在の目標設置台数はいまの倍というが、二反田さんによるとやや悩ましい問題もあった。