金正男氏の暗殺事件について、中国ではほとんどのメディアが沈黙を守っているなか、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際問題専門紙「環球時報」だけは外電を引用するなどして事件を詳細に報道している。
同紙は北朝鮮専門家の話として「金正男は長年“局外人”であったことから、この事件だけでは朝鮮半島情勢が揺れ動くというはないだろう」と報じたうえで、これらの事件が米国や韓国の対北朝鮮政策に影響を与えることもありうるとの見方を明らかにした。
一方、同紙独自の見解として、「今後、事件の背後の存在として、これまで注目されていない人物や勢力に光が当たる可能性もある」として、北朝鮮政権上層部の存在を示唆している。
金正男氏の暗殺事件について、中国では外務省スポークスマンが定例の記者会見で、記者の質問に答えるという形で、「中国側はメディアの関連報道に留意しており、現在、同事件の動向に注意を払っている」と述べて、事件について注視していることを明らかにした。
さらに、スポークスマンは「事件はマレーシアで発生しており、マレーシア側も同事件に関して現在調査を進めている」と述べて、中国政府としてはマレーシア側と連絡を取って、捜査情報などを提供してもらうことも考えていることを示唆している。いずれにしても、中国政府はこの事件に重大な関心を持っているようだ。
また、同紙は事実関係以外にも、北朝鮮問題の専門家である徐宝康氏に取材し、事件が今後の国際情勢に与える影響について言及。この事件の2日前に、北朝鮮が事実上のミサイル発射実験を行ったことで、「トランプ米政権の北朝鮮政策に大きな変化を与える契機になった」としたうえで、さらに今回の金正男暗殺事件によって、「トランプ政権の対北政策がかなり強硬になる可能性を秘めている」と分析している。
同紙は「この(暗殺)事件は中国が望んでいる切実な利益とは程遠いものだ。我々が望むのは人類の基本的な正義感から出るものだ」との表現で、暗殺という卑劣な手段に訴えた当事者を強く批判しており、暗に金正恩指導部に不快感を表明しているようだ。