ポテトチップスの老舗メーカー、湖池屋が今月“プライド”をかけて発売した、その名も『KOIKEYA PRIDE POTATO(コイケヤプライドポテト)』が、販売の一時休止を余儀なくされるほどバカ売れしている。
国産じゃがいも100%使用という原料のプレミアム感も去ることながら、販売を休止した2種類は、炙った和牛(商品名/魅惑の炙り和牛)や松茸(商品名/松茸香る極みだし塩)風味を出すなど、他社ポテチとの差別化を狙った商品開発が奏功したといえる。
もともと湖池屋ブランドのスナック菓子には、『コイケヤポテトチップス』シリーズのほか、『カラムーチョ』や『ポリンキー』、『ドンタコス』といったロングセラーのヒット商品もあるが、経営的には安閑としていられない状況が続いていた。
「スナック菓子業界には“巨人”のカルビーがいて、ポテチ市場シェアの約7割を握っているばかりか、近年はコンビニ向けにPB(自主企画)商品を開発するなど、ますます勢力を伸ばしている。
一方、湖池屋は2012年から2年連続で赤字に陥るなど苦しい経営を強いられ、古い組織体制や商品群の抜本的な見直しを迫られてきた」(経済誌記者)
2011年からはカップ麺で有名な日清食品ホールディングスと資本・業務提携を結び、子会社再編や湖池屋ブランドの再構築を進めてきた。
その過程で昨年、新生・湖池屋の新社長として外部から招聘されたのが、“伝説のヒットメーカー”と呼ばれていたキリンビバレッジ前社長の佐藤章氏(57)だ。経済ジャーナリストの永井隆氏が、佐藤氏の経歴を明かす。
「佐藤さんはもともとキリンビールの入社。営業では早々に実績を残しますが、アサヒの『スーパードライ』に抜かれたビール人気を取り戻したいと、花形の商品企画部に自ら志望して異動してからは、目立った活躍はできませんでした。
数々の挫折を経験し、社内でもクサっていた佐藤さんが変わったのは、1992年に研修でドイツ・ミュンヘンを訪れてから。現地のビール醸造職人の仕事ぶりを見て、『消費者を見ず、自分や組織の都合で商品を作っても売れるはずがない』との胸中に至ったといいます。
決して妥協しない商品づくりは、帰国後に出向したキリンビバレッジですぐさま成果に結びつきます。缶コーヒーの『FIRE(ファイア)』や『生茶』、『アミノサプリ』など次々とヒット商品を飛ばし、一躍、“カリスマ・マーケター”としてその名を轟かせるようになりました」
佐藤氏の商品に対するこだわりを表すこんなエピソードもある。