安倍晋三首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が1月23日、譲位のあり方を検討する上での論点整理を発表した。そこに集約された憲法学者、評論家らによる天皇制を巡る意見は、「結論ありき」との批判がたえない。
しかし、ジャーナリスト・東谷暁氏は、安倍政権が「有識者会議」を必要とする理由にこそ、譲位問題の本質が隠されていると述べる。そして東谷氏は、2016年8月、今上天皇が「ご意向」を表明することが報道された事件を「これは宮内庁の一部とNHKの皇室担当者によるクーデター」と表現する。
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現行憲法では天皇の国事行為は内閣の「助言と承認」によって行われる。天皇誕生日に際しての「おことば」にあったように、この行為が「内閣とも相談しながら」なされたのであるとすれば、内閣は天皇への「助言と承認」を行っていたことになる。
しかし、安倍内閣の「ご意向」表明についての「助言と承認」は憲法に基づくものとはいえない。内閣が助言をして天皇に「ご意向」を発表していただくなどという条項はどこにもないし、そうした解釈の根拠にすべき条項も見当たらない。
したがって、安倍内閣は恐るべきことに、天皇の国事行為あるいは公的行為ではない行為に「助言と承認」を行ってしまったことになる。結果的にせよ違憲行為に及んだのは安倍首相本人なのだ。
では、この違憲行為において、天皇ご自身には責任はないのだろうか。もちろん、あるわけがない。国事行為および公的行為において、内閣の助言と承認が必要とされる天皇は「無答責」である。この点は憲法の教科書にも書いてある法理上自明のことだ。