団塊世代(1947年~1949年生まれの約700万人)が他の世代から嫌われる理由は、「人数で幅を利かせ、高度経済成長に乗っておいしい思いをしてきた挙げ句、バブル崩壊以降の負の遺産を下の世代に押し付けている」ということだろう。いわゆる「団塊逃げ切り批判」だ。
だが、高額療養費の自己負担の上限額がこの8月から引き上げられたり、いわゆる『年金減額法案』が可決されたりするなど、むしろ人数の多い団塊世代を狙い撃ちにするような制度改正が続く。
じつは団塊世代が損をしているという実例はほかにもある。そもそも団塊世代は、世間から叩かれているほど、収入面で恵まれていたわけではない。
国税庁の「民間給与実態統計調査」を紐解く。団塊の世代とその5歳上と5歳下の世代について、それぞれの年齢ごとの平均給与の推移を見ると、50歳を超えたあたりから、5歳上世代は伸びが頭打ちして水平に移行する(現状維持)のに対し、団塊世代は急激に下降線を描き始める。
この時期は、リストラブームを経て、“空白の90年代”の真っただ中、北海道拓殖銀行や山一証券など金融機関の破綻が始まった頃で、こうした背景から給料が下降していったと推測される。
生涯賃金で比較すれば5歳上と団塊ではほぼ同程度ではあるが、50代といえば住宅ローンもまだ完済していないはずで、人によっては子供の大学費用を捻出しなければならない時期だ。そのころにぐんぐん給料が下がっていくというのは、非常に辛い状況だったはずである。
昭和23年生まれの元会社員(68歳)は、下の世代より恵まれているという批判に対して、こう反論する。
「オレたちの時代は60歳定年だったが、今は65歳まで伸びている。60歳を過ぎれば減額されるにしても、5年も収入が保証される。定年して会社を追い出された後、バイトで食いつないだオレたちより恵まれているよ」
都心から郊外に追いやられてきたのも団塊世代だ。