久々となる日本人横綱のいる本場所が近づくにつれ、さらなる盛り上がりを見せる大相撲。その土俵を盛り上げるのが、新横綱・稀勢の里に続く、「ガチンコ力士」たちの存在だ。なかでも、稀勢の里と同じ「ガチンコ部屋」「他と交流しない部屋」である田子ノ浦部屋に所属する小結・高安、初土俵から17場所で関脇昇進した時津風部屋の正代(しょうだい)、正代と同部屋で同じ東農大出身の十両・小柳らが注目力士として名前があがる。
若手注目株では、御嶽海(出羽海部屋)も見逃せない。昨年は3場所で2ケタ勝利をあげて三役昇進を果たしたものの、九州場所は6勝9敗の成績で大関獲りは白紙に戻っていた。
「それが、前頭筆頭だった初場所で2横綱2大関に勝って11勝。平幕ながら初場所の懸賞獲得数では3位(1位白鵬、2位稀勢の里)に入った。再び大関候補に浮上している」(古参力士の一人)
4横綱時代(白鵬・日馬富士、鶴竜、稀勢の里)を迎えたことで、“大物喰い”の力士を注目する楽しみも増える。
「上位によく土をつけるのもガチンコ力士の特徴です。昨年初場所以降に、関脇以下の力士が横綱・大関からあげた勝ち星の数(不戦勝は含まず)を調べると、高安の14勝に次ぐ13勝をあげているのが隠岐の海(八角部屋)です。とくに秋場所は2横綱3大関を破って初日から6連勝という圧巻の強さを見せた。ただ、場所を終わってみたら9勝6敗と調子の波が激しい。そこを楽しむのもいいでしょう。
同様に調べて横綱・大関から勝ち星が多い勢(9勝、伊勢ノ海部屋)、嘉風(8勝、尾車部屋)、宝富士(7勝、伊勢ヶ濱部屋)らは、ちょうど序盤で上位陣にぶつかる番付にいるので、波乱が期待できる。また、逸ノ城(湊部屋)や玉鷲(片男波部屋)、荒鷲(峰崎部屋)、貴ノ岩(貴乃花部屋)といったモンゴル人平幕は、同郷の先輩にも遠慮せずぶつかるのが持ち味。一味違った“モンゴル対決”も注目の一番になってくる」(若手親方の一人)
ガチンコ平幕が暴れ回る「荒れる春場所」になるのか──新横綱の戦い以外にも、見どころは多いのだ。
※週刊ポスト2017年3月3日号