アメリカのトランプ大統領の動向から目が離せない。「移民入国禁止」などに代表されるように、次々と大統領令に署名し、世界中のマスメディアから批判を受けている。通常、大統領就任から100日間は「ハネムーン期間」といわれ、メディアとも良好な関係を築くのが普通だが、早くも不支持が支持を上回るなど、前代未聞の状況に陥っている。トランプ氏は世界にとって本当にヤバイ存在なのか。2月15日に緊急出版した『アメリカ大統領を操る黒幕:トランプ失脚の条件』(小学館新書)が話題を呼んでいる元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏に話を聞いた。
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相も変わらず、米国メディアのトランプ批判は凄まじいものがあります。ですが、トランプが現在、行っていることは選挙期間中に掲げた公約を粛々と実行に移しているに過ぎません。なぜ、米国のマスメディアが必要なまでにトランプを攻撃するのか。それはマスメディアもアメリカのエスタブリッシュメント層、つまり支配者層の一員で既得権益層だからです。だからこそ、選挙戦からマスメディアはヒラリー優勢を連日伝え続け、トランプの発言をねじ曲げて、貶めるような発言を繰り返していたのです。そんな状況が国民に伝わったのです。だから、トランプが当選したことはいうなれば”革命”といってもいいかもしれません。
大統領就任演説の冒頭でトランプは「ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあずかる一方で、アメリカ国民がその代償を払ってきました」と述べています。アメリカを支配するエスタブリッシュメント層がグローバリズムの果実を独占し、一般の国民はどんどん貧しくなり、戦地に駆り出された若者が命を落としてきたことを批判しています。そのエスタブリッシュメント層の代弁者、代理人として、国民をコントロールしてきたのがメディアでした。アメリカメディア発のニュースをなぞるだけの日本のメディアにも猛省して欲しいと思っています。
これまでのアメリカを牛耳っていたのがネオコン(ネオコンサバティズム:新保守主義)と軍産複合体、そしてそのバックにいる国際金融資本でした。戦争をすれば、軍産複合体が儲かります。そして、戦費を調達するには国際金融資本の協力が欠かせません。つまり、これまでは国際金融資本の掌で転がされてきたようなものです。ヒラリーが中国マネーにどっぷりと浸かり、「クリントン財団」を通して、多額の寄付をウォールストリートから得ていたことはよく知られています。つまり、ヒラリーはエスタブリッシュメント層の代弁者に過ぎなかったのです。そのことを国民が見破ったからこそ、トランプ大統領が誕生したのです。もし、ヒラリーが大統領になっていたら、各地で起こる紛争に首を突っ込み、最悪の場合は第三次世界大戦に突入する可能性もあったと見ています。
とはいえ、グローバリストたちがこのまま黙っているとは思えません。
前述したように、いまだ続くメディアによるトランプ攻撃はその証左でしょうし、もし、トランプが国際金融資本の「虎の尾」を踏んだ場合は、政治的にも生物的な意味でも命を失いかねません。FRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長に対し、攻撃的な態度をとってきましたが、果たしてどこで折り合いをつけるのか。それがトランプ政権の鍵を握るといっても過言ではありません。
また、グローバリストであるネオコンの最大の敵はロシアのプーチン大統領です。だからこそ、プーチンと接近しようとするトランプを攻撃し、またプーチンを国際社会から孤立させるような謀略を張り巡らせています。西側メディアはロシアのウクライナ侵攻に対して、経済制裁をかけていますが、かつてウクライナに駐在していた私から見れば、ウクライナ危機はネオコンがプーチンを妥当するために仕掛けた罠なのです。