ライフ

和牛「A5信仰」見直し始まる 30年でサシは倍増していた

A2でもこのサシ

「サシが入るほど良い牛肉」という和牛信仰が見直され始めている。脂が多い肉は本当に良い肉なのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 ようやく「A5信仰」に一石が投じられた。浅草の老舗すき焼き店が自店で提供する肉の基準を見直したところ、「”脱”霜降り!?」などと大々的に報じられたからだ。

 実際のところ、この老舗が行ったのは従来からの肉の仕入れスタンスをより明確にしただけのことだった。以前、取材したときに言っていたのは「うちの割り下には、4等級のサシが合う」、「脂は量もさることながら質が大切」。脂についてはおおむねこの2点に集約される。

 ざっくり言うと「A5」の「5」は「肉質等級」と言われ、脂肪交雑――霜降りの度合いを表す。5等級がもっともサシが入り、1がもっともサシが少ない。

 もうひとつの指標もある。BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)という12段階の基準で、肉質等級の5段階に対応しておりBMS12~8が5等級、BMS7~5が4等級、BMS4~3が3等級、BMS2と1はそれぞれ肉質等級2と1に対応する。つまり肉質等級の高い肉について、より細かい指標を定めたものだ。もっとも昭和の頃に作られた、見た目のみの判断基準ではあるが。

 先の老舗にしても、いままでA5を使っていたといってもBMSでは9か8くらいの印象だった。つまり5等級としてはサシが少なめの肉を使っていた。だが同じ基準でも、サシの入り方はこの30年ほどで大きく変わっている。芝浦の食肉市場のベテラン業者などは「30年前はサシが3割入っていれば BMS12~10と判定されたのに、いまは6割ないとそうはならない」という。

 実際この傾向はデータでも裏付けられている。1985年に農林水産省畜産試験場らのチームが報告したデータではBMS12、11の「特選和牛」の粗脂肪含量は31.7%となっている。だが13年後、1998年の北海道農業研究センターなどのチームは、 BMS10以下の群に粗脂肪含量39%の牛がいるというデータで論文報告を行っている。また2009年、味覚と食嗜好研究所らによる報告では、百貨店で販売されていた5等級の和牛サーロインに粗脂肪量69%の肉があったという。「同じ等級でもこの30年で脂肪含量が倍になっている」という市場関係者の見方はやはり正しかったのだ。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン