地下鉄サリン事件から22年が経ち、新宗教の信者数は激減している。有力教団のデータからその傾向は明らかだ。
平成に入ってからの1990年、地下鉄サリン事件後の2000年、最新版の2014年で比べると信者数の推移は以下の通りだ(文化庁・宗教統計調査)。
■天理教 183万人→175万人→116万人
■立正佼成会 634万人→574万人→282万人
■PL教団 125万人→111万人→90万人
■霊友会 320万人→170万人→134万人
■生長の家 83万人→85万人→52万人
それは現在与党の一角を占める創価学会もまた同様だと宗教学者の島田裕巳さんが指摘する。
「創価学会が公表する会員数は827万世帯で近年は変化がなく、実態はよくわからないが、実際の信者数は、現在250万人ほどと推定されます。今は高度成長期に入信した信者の高齢化が進み、宗教的な活動を行うことが難しくなった。昔ほど人間が移動しなくなって地域に定着したため、各地でゆるい地域共同体ができて宗教に人間関係を求める必要も減っています。
しかも現在、悩みを持つ若者が頼るのは神ではなく、スマホやネットです。スマホはすぐ答えが返ってくるが、宗教は修行などで時間がかかり、スピード感のなさが若い人には物足りない。実際に米国の研究では、無宗教者とネット利用者の増加に相関関係があることがわかり、『グーグルは神の最大の敵』『神殺しの犯人』といわれています」
かつてと比べて現在は、新宗教の勧誘が難しくなっていると指摘するのは、カルトに詳しい紀藤正樹弁護士だ。
「1995年のオウム真理教事件後、新宗教が駅前などで行う街頭での伝道活動が減りました。新しい信者の獲得が難しくなり、教勢が停滞するようになりました」
新宗教が一斉に冬の時代に入るなか、生き残りを賭けて大きく動いたのが女優・清水富美加(22才)が出家した幸福の科学だった。幸福の科学を長く取材しているフリーライターの藤倉善郎さんが解説する。
「幸福の科学は1991年のフライデー事件後、霊言の公表をやめてメディアと対立しなくなったが、2009年ごろから再び活動が活発化しました。政治団体の幸福実現党を結党して大規模な宣伝活動を開始し、大川隆法総裁は霊言を連発するようになり、広報活動の一環としての映画製作件数も多くなりました。2012年の映画『ファイナル・ジャッジメント』は、中国を想起させる国が日本を侵攻し、それを宗教が救うというストーリーです。それまでの宗教的な活動に政治的な意味が加わるようになりました」
新しい信者の獲得が難しくなった幸福の科学は、2世信者の「宗教教育」を徹底するようになったという。
「幸福の科学は小中高生向けの教団内学習塾、中学校と高校などを運営しており、2世信者への教化教育を徹底しています。高校生の2世信者の中には、『主(大川教祖)に命を捧げる!』と演説する者もいるほどです。