“そろそろ”だろう──ここ数年、財界でそんな噂話が囁かれていた“コストカッターの勇退”が発表された。日産自動車のカルロス・ゴーン社長の退任だ。
日産を建て直すため提携先の仏ルノーからゴーン氏が送りこまれたのは17年前。激烈なリストラやプロ経営者としての超高給が批判されもしたが、業績急回復という結果で黙らせた。昨年には、経営危機に直面した三菱自動車の支援を決め、同社会長にも就任した。
社長退任とともに注目されたのは、ゴーン氏が会長に“昇格”したことだ。
「今後も経営に目を光らせるということ。後任の西川(廣人)共同CEOはゴーン路線の実務を担ってきた。西川さんとしても社内に“後ろ盾”がいることは心強いはず」(日産関係者)
一方で、日産会長就任という「進路」はこんなサプライズ転身の可能性を残した。「財界総理」と呼ばれる経団連会長だ。
「基本的に経団連ポストは加盟企業の会長クラスが務める慣行。近年、存在感が低下している経団連にとって、万が一『ゴーン経団連会長』となればインパクトは絶大です」(経済ジャーナリスト・磯山友幸氏)
現在の榊原定征・会長は出身企業(東レ)の規模の小ささから、“軽量会長”との評価がつきまとう。来年6月に会長の交代時期を迎え、次期会長候補となる副会長人事も出揃ったが(今年6月に一部交替)、この顔触れも“小粒”といわれる。
「やはり日本企業の代名詞は自動車産業。経団連内部では大物会長と呼ばれた奥田碩さん(トヨタ元会長、現相談役)以来の自動車業界からの会長誕生を望む声は強く、経団連内部ではトヨタの豊田章男・社長が経団連副会長を引き受けることを期待していたようですが、結局は専務の早川茂氏が就任した。トヨタが経団連と距離を置いている感は否めない」(経済誌記者)
そこにゴーン氏が名乗りを上げることになれば確かに衝撃。ちなみに経団連規約には「外国人経営者はNG」という規定はない。
「日産は業界トップではないし、護送船団方式を象徴する経団連にゴーン氏が興味を抱くとは思えない。しかし経団連が復権を目指すなら、ゴーン氏を三顧の礼で迎え入れるくらいの覚悟が必要です」(前出・磯山氏)
外国人労働者の積極受け入れを提言してきた経団連、まずはトップ人事から始めてみるか。
※週刊ポスト2017年3月10日号