散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の作家・戌井昭人氏の週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、大好きな素敵な食い物「とんかつ」についてお届けする。
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以前、糸井重里さんから昔アルバイトをしていた自動車工場の昼食のメニューが、とんかつだったときの話を聞きました。先輩が「今日はとんかつだ、ぼくはカツが大好きなんだ」と言ったそうで、糸井さんは、その先輩の発した「ぼくはカツが大好きなんだ」という率直な言葉に、たいへん感銘を受けたそうです。そしてわたしも感銘を受けました。
小学生のころのわたしは、とんかつ屋になりたいと思っていたほどで、糸井さんの話を聞いてから、とんかつを目の前にしたときは、「ぼくはカツが大好きなんだ」と心の中でつぶやいてから、食べるようになりました。
とんかつって、どうしてあんなに素敵な食い物なのでしょう。添えられているキャベツも最高です。どのようなあんばいで飯を食い、カツを食い、キャベツを食うか、と考えさせられるのもたまりません。さらに、ご飯のおかわりをするならば、味噌汁やおしんこの配分も注意です。ちなみに、わたしはキャベツおかわり派です。