突然届くのが訃報というもの。準備ができていないだけに、お通夜や葬儀のマナーで戸惑うことも少なくないだろう。たとえば、遺族との会話などもなかなか難しい。
通夜が終わったあとに料理が振る舞われることを“通夜振る舞い”というが、故人との最後の食事となるので断らず、一口でも箸をつけるのがマナーとされる。大人のあり方などをさまざまな媒体で発信しているコラムニストの石原壮一郎さんはこう説明する。
「この時の話題として、故人のことを褒めると供養になります。例えば、“あの人の周りではいつも笑顔が絶えませんでしたね”は、遺族からしても、言われて嫌でない言葉だと思います」
同様に、“奥さんのことをいつものろけていた”“子煩悩だった”“家族を大事にする人だった”など、故人を偲ぶ想いとともに、ご遺族を気遣う気持ちも大切にしたい。
では、通夜や葬儀に参列できなかった場合はどうすればいいのだろうか。一般的には、“存じあげなくて、申し訳なかった”と素直に伝えてから、気持ちとして、お香典やお花、お線香などをお送りするのがよいとされている。現代礼法研究所代表の岩下宣子さんが説明する。
「ただし、あまり後からお金を送られても、お返しが負担になるので、お香典をお送りするのは四十九日まで。遺族側の応対時のご負担を考えると、四十九日以降は、直接の訪問より、お花を送るなどして弔意を伝える方がいいでしょう。なお、その時、白い花だと、死を思い起こさせるので、パステルカラーのものを選びましょう。また、“お花を送らせていただきたいのですが…”と、事前にお断りも入れておきましょう。香りのよいお香でも構いません。よい香りは、心を癒してくれるので、お香専門店などに相談してもいいでしょう」
一方、ペットを亡くした場合はどうだろうか。ペットを家族として考える人は多い。人と同様、お悔やみの言葉は必要だろう。
「ただし、御愁傷様です、と言うよりは、“悲しいね、私も悲しい”などと相手の悲しみに寄り添い、背中をさすりながら、共に悲しんだ方がいいでしょう。これは人にも同じことが言えますが、愛する人を亡くした悲しみに対して、言葉は無力。いくら何を言っても、悲しみが癒えることはありません。それよりも、黙って、共に悲しむのが何よりのお悔やみです」(岩下さん)
美辞麗句を言う必要はない。心がこもったお悔やみなら、相手にもきっと伝わる。
※女性セブン2017年3月9日号