「金正日の料理人」こと藤本健二氏の周辺がにわかに騒がしくなっている──。藤本氏は先日、北朝鮮・平壌市内に日本料理店『たかはし』をオープンした。訪朝して同店を訪れたA氏が言う。
「店は約10畳の広さで、藤本さん以外に現地(北朝鮮)従業員2人で切り盛りしていた。出前の注文なども舞い込み、店内は活気に溢れていました。
藤本さんに“日本の家族に連絡してる?”と聞くと“してない”って笑っていました。日本料理がメインの店だけど“ラーメンも作れるよ!”とのことです」
藤本氏は金正日総書記の専属料理人を務め、金正恩・朝鮮労働党委員長を幼少時代から知る人物。この店を開いたことで、さらに北朝鮮と親密な関係になったと思われるが、実は最近まで安否不明の状態が続いていた。
今年1月24日、藤本氏の「消息に関する質問主意書」を国会に提出した有田芳生・参院議員が話す。
「藤本氏は金正恩氏と密に連絡が取れる唯一の日本人。昨夏に訪朝したのは昨年10月10日の朝鮮労働党創立記念日に合わせ、平壌でラーメン店を開く予定だったためですが、最近まで消息が全く途絶えていた」
有田氏の質問に対し、政府は“プライバシーに関わる”との理由で回答拒否。これが2月2日のことだが、不思議な事態が起こるのはその後である。
「韓国側から私のもとに人を介して〝これ以上(藤本氏の件で)騒がないでくれ〟との申し入れが2回もありました。どちらも韓国大使館ルートを通じてでした」(前出・有田氏)
“なぜ韓国がこの件で過敏に反応するのか?”と訝しく思っていたという有田氏。公安関係者が解説する。
「韓国の情報機関・国家情報院の関係者が藤本氏に接触して北の情報を収集しようとしているとの話がある。秘密裏に藤本氏を自分たちの側に取り込みたい韓国側が、藤本氏に過度な注目が集まるのを嫌ったのではないか」
藤本氏の数奇な人生に、北も南も注目しているようだ。
※週刊ポスト2017年3月10日