昨年8月8日に天皇陛下が生前退位のご意向を表明されてから、与野党で「一代限りの特例法」か「皇室典範改正」かで意見が割れている。このたび『天皇論 平成29年』を上梓した漫画家・小林よしのり氏は、「皇室典範改正」でなくては陛下のご意向に沿えないと危機感をあらわにする。同氏が新刊を描いた理由を明かした。
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わしは昨夏の「平成の玉音放送」を聞いて、国民の一人として申し訳なく思った。
小泉政権で女性・女系天皇の案が流れてしまい、さらに野田政権では「女性天皇・女系天皇・女性宮家」の案は潰されてしまった。皇位継承は男系男子しか許さないというノイジーマイノリティーが存在するからだ。彼らから支持されている安倍政権は皇室典範の改正にはどうしても着手しようとしない。
政治家がまったく動こうとしないなか、とうとう陛下は皇太子に譲位することで典範改正をしてもうらしかないと考えるに至ったのだ。
政府が陛下のご意向を無視するから、陛下は国民に直接訴えるしかなかったのである。
天皇陛下をここまで追い込んでしまったのは、政治家だけでなく、国民一人ひとりの責任でもある。その意味で、わしは申し訳なく思ったのだ。これまで典範改正の必要性を訴え続けてきたが、力が及ばなかった。
わしは平成21年(2009年)に『天皇論』を発表してベストセラーとなったが、陛下のお言葉を受けて、あらためて読み直してみると、「もう通用しない」と感じる箇所もあった。天皇陛下がわしの考えを変えたのだ。
『天皇論』を生まれ変わらせなければならないと決意し、わしは直ちに『天皇論 平成29年』の制作に着手した。大幅に描き直し、さらに陛下のお言葉によって見えてきたことをたっぷり描き下ろす必要があった。結果、漫画だけでも100ページを超す描き下ろしとなり、総ページ数が552ページという、とてつもなく分厚い大作となった。
『天皇論 平成29年』では、陛下のお言葉の真意を徹底的に分析している。陛下は最後に「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」と仰った。皇位の安定的継承は陛下の悲願である。それを「一代限りの特例法」で済まそうという安倍政権・自民党の動きは天皇陛下への恐るべき侮辱である。
本書では、「愛国」「尊皇」を口にしつつも実は陛下のご意向を無視する逆賊が誰であるかを明らかにしている。また、「天皇」「皇室」について、とことん考え抜いて、本当に必要なのか、国民は欲しているのかまで含めて徹底的に論じている。
日本という国の根幹にかかわる「天皇制」を知り、日本の国柄を知る最良、最強の書であると自負している。ぜひ、熟読してほしい。