近年、GDPで日本経済が語られる時は、常に悲観ムードが付きまとう。中国に抜かれて世界3位になったことや、一人当たりのGDPが20位以下に沈むなどが、その根拠だ。しかし、2012年発表の国連統計では、日本は世界一豊かな国だとされている。経済学者の福島清彦氏が、GDPだけでは測れぬ国の豊かさを解説する。
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従来のGDPは、個人消費、設備投資、政府の支出、輸出入の統計で構成され、各国の経済の健全性や強さを表す指標として、政策上重視されてきた。近年では「国際分業が進む中でどれだけの付加価値が確保できているのか」「質の向上と消費者の満足度の向上」「気候、人口、資源の変動に連動した経済の持続可能性」などはGDPでは計測できないとの指摘があり、GDPに代わる“超GDP”のニーズが高まった。国が良好な状態を維持した生産活動、つまり「暮らしと生活の質」を測る統計が求められていた。
英国では、1997年に誕生した労働党のブレア政権時代から超GDP、幸福度増大の戦略が練られ教育をはじめ着々と実践している。米国は、「アメリカの現状」という名の民間団体が超GDP指標研究に乗り出し、新指標の開発に取り組んでおり、今では中央銀行も超GDPの存在に注目している。
フランスでは2008年、当時のサルコジ大統領が「GDPは生活実感に合わない」と感じたことからGDP以外の暮らしの質・福利厚生度を測る指標づくりを要請した。国連で採択された新統計はこのとき作成された「スティグリッツ報告」を踏襲したものだ。欧米先進国のみならずブラジル、中国でもその志向は高まっている。世界はすでに超GDPの新指標をもとにした戦略へと舵を切りつつあるのだ。
国連の新統計は2年ごとに発表される。2014年版では対象が140か国となり、統計期間が1990年から2010年までの20年間に広がった。その中で1人あたりの豊かさはアイスランドが1位、日本は15位だった(2016年版は未発表)。
これは2009年から2010年の2年間で日本が急に貧しくなったわけではない。たとえば人的資本は改訂版では学歴がどれだけ高くなったかの「成長率」を換算し、元から高い水準にある日本にとっては反映されにくい統計方法に変更されたことなどが大きい。