ブラジルで開催されたテニスのリオ・オープンで世界ランキング5位の錦織圭(27)が、世界76位のトーマス・ベルッチに敗れ、まさかの初戦敗退となった。
ラケットをコートに叩きつけて壊すほどの怒りを見せた錦織だが、調子を崩した背景に、2日前に達成してしまった“不名誉な記録”の影響があったと指摘されている。テレビ局のスポーツ担当デスクが言う。
「錦織は昨年4月のマイアミ・オープンから2月20日のアルゼンチン・オープンまで“ツアー決勝6連敗”しています。これにはわれわれメディアも困っていて、毎回“優勝へ”と盛り上げるだけ盛り上げて、最後は決勝で惜しくも敗れた、と尻すぼみで終わってしまう。かといって、これまでの日本選手に比べれば準優勝でも十分すぎるほど凄いわけで、批判もしづらいのです」
常に世界ランキング5位以内をキープし、王者のアンディ・マレーに「(自分と錦織との)差はない」と言わしめる実力者の錦織だが、なぜか優勝には手が届かない。
スポーツ界には12回の優勝のチャンスを逃し続けてようやく横綱になった稀勢の里や、ソチ五輪でメダルを逃したスキージャンプの高梨沙羅など、「普段は強いのに“ここ一番”にだけ弱い」選手がいる。スポーツメンタルトレーニング指導士で、東海大学体育学部専任講師の與名本稔氏は、こう分析する。
「勝率はいいのに、今回は勝つだろうと周囲の期待が強い時に限って負けるので“勝負弱い”という見方をされてしまう。実際にはほとんどが運なのですが、もう一つ重要なのが普段と違う環境への対応力です。
高梨選手は、普段は日本人が周りにいない環境で戦っているのに、五輪ではいつもはない歓声が聞こえてしまったのでは。錦織選手も、決勝で敗れたアルゼンチン・オープンは初めての会場でした。気候やコートの状態に対応しきれなかったのかもしれません」
しかし、ここ一番に強い人は普段と違う環境でも勝てるもの。何が違うのか。
「錦織選手はリラックスした試合運びが持ち味ですが、その分、サーブの前にボールを5回バウンドさせたり、10回にしたり、バラバラで規則性がない。普段と違う環境では、儀式的な決まった動作、つまりルーティンがあったほうが自分を発揮できる。それこそ、ラグビーの五郎丸ポーズのように、確固たるルーティンを作ったほうがいいのでは?」
グランドスラム初制覇の鍵は、「錦織ポーズ」にあり。
※2017年3月10日号