〈大相撲がはじまると、人生もまた十五番勝負だな、と思う。はたして、いまの私は何勝何敗なのであるか〉〈七十五歳で十五番勝負をするとすれば、五年間が一勝負となる〉──。「人生十五番勝負」という人生観について語った作家の嵐山光三郎氏による「文藝春秋」2月号掲載のエッセイが話題となっている。千秋楽を迎えたら、あなたの人生は勝ち越しか負け越しか。
福岡県出身《ジャーナリスト部屋》の鳥越俊太郎氏(76)は、十三勝二敗と、優勝してもおかしくない成績を自認する。
十三勝の中には燦然と光り輝く大金星がある。十三日目(61~65歳)だ。
「61歳の時に桶川ストーカー殺人事件での警察の虚偽発表を報じました。63歳の時、1989年から続いていたテレビ番組『ザ・スクープ』は打ち切りが決まりましたが、3万人のファンの署名によって、年に4~5回、スペシャル番組が続くことになりました。『こんなことはこれまでにない』とテレビ業界では評判になっています。64歳の時には、警察の裏金に関する報道で、ギャラクシー賞を受賞しました」
仕事での躍動が、65歳での直腸がん発覚を上回っているのだ。その後、療養生活を送る最中に二敗目を喫している。
「66歳の時に民主党から都知事選への立候補オファーがありましたが、がんのために断わりました。68歳で肝臓に転移していることがわかり、切除手術を受けてステージIVから完治しました。ただ、少しはいいこともあって、2007年に、ダンディ大賞の文化人部門で1位に選ばれましたし、手術後はジムに通って肉体改造を行ない、健康を取り戻しました」
千秋楽には、72歳でホノルルマラソン完走という驚異の粘りも見せており、星の数より取組内容を重視する鳥越氏は、「病気になった年を除いては、人生すべて白星といってもいいという感じです」と前向きだ。
もっとも、75歳までの十五番勝負で人生は終わらない。十六番、十七番と続いていく。鳥越氏はその十六日目に、小池百合子・東京都知事にこっぴどく土俵に叩きつけられた。
「止めときゃいいのに、『自分は出なくてはいけない!』というアホな思い込みで東京都知事に立候補して、結局、アホな結果しか生み出さなかった。それから、仕事もがくんと減りました」
しかし鳥越氏は楽観的だ。
「いい経験をしたと思っています。これからは表現者として、プロデューサーか監督という立場で映画も作りたいと思っています。これからも、僕の人生はまだまだ楽しいだろうし、楽しくしていきたいと思っていますよ」
休場することなく土俵に上がり続ければ、負けを挽回するチャンスもやってくる。
※週刊ポスト2017年3月10日号