深夜0時、特別オープンした都心の大型書店に100人超の行列が駆け込んでいく。目当ては全員、平積みにされた1つの新刊書籍。「始発までに読破する」(客の1人)のだという。
2月24日、村上春樹氏(68才)の新作『騎士団長殺し』(新潮社刊)が発売された。2009~2010年に発売した『1Q84』(同社刊)以来7年ぶりの長編大作。発売前に重版がかかり、すでに発行部数130万部を超えた。
「騎士団長」という名前からヨーロッパを想像するが、物語の舞台は神奈川県小田原市。肖像画を得意とする画家「私」は突如妻に離婚を切り出される。「私」は都心を離れて山頂の古い家に暮らし始め、屋根裏で1枚の絵を発見する。
絵に添えられた「騎士団長殺し」の文字。肖像画の依頼に現れた「免色(めんしき)」という名の金持ち男の過去、毎晩鈴の音が聞こえる不気味な穴の正体…。多くの謎を抱えた約1000ページの物語だ。
村上は昨年10月、デンマークで開かれたクリスチャン・アンデルセン文学賞の授賞式でこんなスピーチをしている。人間のネガティブな側面を「影」と呼び、次のように説いた。
「時に、私たちはその影やネガティブな部分から目を背けがちです。あるいはこうした面を無理やり排除しようとします。なぜなら人は、自らのダークサイドやネガティブな性質を、できるだけ見ないようにしたいものだからです。しかし、彫像が確固たる立体のものとして見えるためには、影がなくてはなりません」
「村上春樹作品の世界観全開という印象です。『ねじまき鳥クロニクル』の井戸、『踊る小人』を思い出させる不思議な小人、『1Q84』と同じ不可解な妊娠。今までの作品でちりばめられた“謎”の答えにハッと気づかされたところもありました」(40代女性)
「プロローグはどこに繋がる? 続きがもしあったら? など想像の広がる終わり方でした。早く誰かと一緒に、ここはこういう解釈で…と語り合いたい」(50代女性)
全国各地にあるハルキスト御用達のバーでは、夜な夜な同作について熱い議論が繰り広げられているという。
※女性セブン2017年3月16日号