中国の首都・北京で2月下旬、退役軍人ら約1000人が年金支給などの待遇改善を求めて、デモを行った。退役軍人らのデモは昨年10月に続いて2回目。前回のデモの際には1万人以上が参加、中央軍事委員会の幹部やデモ参加者の出身の省のトップが自ら説得に当たり、待遇改善を約束したことから、退役軍事らはすんなりデモを中止した経緯がある。
ところが、前回からわずか4か月しか経っていないなかでの再度のデモ発生で、約束が果たされていないことが判明した形で、ネット上では「習近平指導部の無責任体質が明らかになった」など、批判の書き込みが目立っている。
今回のデモは2月下旬、習近平指導部が進めている反腐敗キャンペーンの拠点となる「党中央規律検査委員会」が入るビル付近で行われた。腐敗摘発は習近平指導部が最も力を入れているだけに、その同委のビル周辺での抗議デモについて、デモ参加者は米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」の取材に対して、「習近平指導部は反腐敗キャンペーンと同じくらい真剣に、われわれ(退役軍人)の待遇改善に取り組んでほしい、との意思表示だ」と訴えている。
また、同じく米政府系報道機関の「ラジオ自由アジア(RFA)」によると、四川省出身のデモ参加者は「前回の10月のデモにも参加した。その際、軍幹部は『春節(旧正月=今年は1月28日)までには待遇改善の返事をする』と言っていたが、梨のつぶてだった」と憤っていた。
別のデモ参加者は「故郷を出る際、当局からチェックされたが、いったんは戻る振りをして、すきをみて、再び出てきた。みんなも全国各地から集まっている」などと話しており、中国語版ツィッター「微博(ウェイボ)」などのSNSで連絡を取り合っているようだ。
これに対して、警察は数十台の大型バスやパトカーを配置して現場を封鎖し、報道関係者や一般人が現場に近づくことを阻止しており、今回もデモは2日ほどでいったんは収束。だが、あるデモ参加者は「今後も2陣、3陣と問題が解決するまで全国から仲間が北京に来て、抗議デモを繰り返す予定だ。われわれの要求が通るまで止めない」と息巻いていたという。
RFAの書き込み欄には「軍の構造的な問題だ。背景には、習近平指導部が進める軍事改革への不満が根強くあるのではないか」といった意見も書き込まれた。