為替相場はアメリカのトランプ大統領の発言に翻弄される展開が続いている。その中でドル/円相場はどのように動いていくのか、為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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米ドル円相場は今後どう動くか。ドル金利の上昇やドル投資圧力は潜在的にあるが、2017年年央まではドル安・円高基調で進むのではないか。
実は米ドル/円だけが特殊な動きで「米ドル安」に向かっており、対ユーロ、対英ポンド、対豪ドルでは「米ドル高」がより鮮明になっている。FX(外国為替証拠金取引)でリスクを抑えながら効率のよいトレード戦略を描くならば、対米ドルでユーロ、英ポンド、豪ドルを売っていくのがよいだろう。売りからも買いからも入ることができるFXの利点を、ぜひ活用してほしい。
トランプ大統領は本音では中国だけでなく、ドイツも貿易不均衡国として攻撃のターゲットにしたいところだが、ユーロはヨーロッパ全体で使っている共通通貨のため、積極的にはユーロ高圧力はかけてこないと思われる。米ドル金利は上昇傾向、ユーロ金利は緩和傾向でステイのため、金利差が拡大していく方向にある。
金利のより高い方に資金が流れると考えれば、ユーロ/米ドルは素直にユーロ安・ドル高方向に進むだろう。英ポンド/米ドルや豪ドル/米ドルも売る戦略が生きるが、世界最大のメジャー通貨ペアであるユーロ/米ドルを売るのが一番わかりやすく、手堅いといえる。
ユーロ/円、英ポンド/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円の通貨ペア)については、私は円高傾向でみており、総じて売りと判断する。
クロス円の代表であるユーロ/円は、米ドル/円とユーロ/米ドルの掛け算で決まる。トランプ政権が米ドル/円に売り圧力をかけて下落方向に進み、ユーロ/米ドルが金利差などを背景に下落していくならば、ユーロ/円も下落していく。クロス円でトレードしたいならば、ユーロ/円を売っていくのがよりローリスクでリターンも望めて効率的だろう。
ユーロには、欧州政治リスクへの警戒感も付きまとう。ヨーロッパでは3月中旬のオランダ総選挙を皮切りに、4~5月にかけてのフランス大統領選、秋のドイツ連邦議会(下院)総選挙と今年は重要な国政選挙が控えている。
反移民・反EU(欧州連合)を掲げる極右政党、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党がヨーロッパで勢いづいており、彼らが選挙で勝利したり、議席数で勢力を拡大したりすれば、リスク回避でユーロ売り、円買いの動きが加速するだろう。不透明感漂う欧米の政治の動向には、くれぐれも注意してほしい。