世界では毎年、生産量のおよそ3分の1に当たる13億トンもの食品が捨てられている。中でも日本は、世界の食糧援助量の320万トンの倍相当の632万トンの食品を廃棄処分している。この現状に対し、供給する側も食品ロス削減の試みを行っている一方で、余剰食品の行き着く先を「廃棄」としない消費者側の試みも。その一例を紹介しよう。
まだ食べられるのにさまざまな理由で処分される食品を、施設などに届ける社会福祉活動を行っているのが「フードバンク」だ。東京・浅草橋にある『セカンドハーベスト・ジャパン』は、2002年に日本で初めて法人化した日本最大のフードバンクで、毎年その成果を上げている。
「食品を提供してくださる企業・団体数は1000社を超えました。最近は一般企業から防災備蓄品を寄贈されることも多くなっています」(スタッフの田中入馬さん)
年間の寄贈量は約2000トン(飲料含む)。日々20人ほどのスタッフが、衛生管理等に気を配りながら、必要なものが必要とされている場所に届くよう活動している。
「寄贈された食品は、東京・神奈川・埼玉を中心に、月平均260件ぐらいの施設や団体に届けています」
2015年に提供した食品は、400万食分にも及ぶ。週に100人ほどのボランティアが品物の運搬に携わり、“つなげる”活動を積極的に行っている。
じわじわと広がりつつあるのが、残した食事を持ち帰るためのツール「ドギーバッグ」だ。食べ残し量の減少を提案する『ドギーバッグ普及委員会』の小林富雄理事長は言う。
「今、“宴会の最初の30分と終わりの10分は、座ってご飯を食べよう”というスローガンを掲げる『30・10(サンマルイチマル)運動』という啓発活動があります。その標語の中に、“それでも食べきれない物は持ち帰りましょう”という文言を入れた自治体が数か所ありますが、これはとても画期的なことです。厚労省が食中毒を防ぐというミッションを抱えながらも、その一方で農水省が食品ロス対策に力を入れた努力の賜物だと思います。
これまで、持ち帰りにいい顔をしなかった大手チェーン店やホテル側も徐々に変わってくるのではないか、と期待しています」
世界的な動きも活発だ。欧州委員会では、2025年までに食品ロスを25%削減する(2013年比)と掲げた。
「このような流れの中で、フランスでは、農業省が“グルメバッグ”という呼称で、ドギーバッグの普及推進をスタート。見た目もおしゃれで、上から目線ではない取り組みが評価されています。特にワインの産地では食に対する意識が高く、グルメバッグが多く普及しているそうです。義務ではありませんが、フランス料理のマナーにチャレンジをする姿勢に共感しました。
ドギーバッグはあくまでも象徴的なツール。ビニール袋でも密閉容器でも構わないと思います。要は、外食時、残してしまう心配をしなければ、もっと食事は楽しくなるものだと思うのです」
“今後はドギーバッグ”――外食時にはそれを思い出したい。
※女性セブン2017年3月16日号