いかにも旨そうな「高級和牛」に、エビ・カニ・イクラなどの「ご当地海産物」、老舗温泉旅館の「宿泊券」……。節税対策として人気のふるさと納税だが、やはりお目当ては寄附の返礼品。
自治体の中には、ふるさと納税争いをなんとか勝ち抜こう、いや、負けるのだけは避けたいと涙ぐましい努力をする自治体がある一方で、あえて返礼品を用意しない自治体もある。
東京では千代田区、中央区、港区、渋谷区、大田区、葛飾区、江戸川区、荒川区、板橋区などがそうだ。
住みたい街ランキング上位の常連である吉祥寺を擁する武蔵野市(東京)も、返礼品を用意しておらず、2015年の寄附件数はゼロだった。
同市の管財課は「そもそも税金の奪い合いになってしまう制度には疑問がある」と疑問を呈したうえで、「返礼品を用意するつもりはありません」と言い切る。
ただし将来的にはどうなのかと訊くと「推移を見て考えたい」との答え。“武士は食わねど高楊枝”をどこまで貫けるか。
ふるさと納税に詳しい鈴木善充・近畿大学准教授は、寄附を集められる自治体とそうでない自治体の差は「返礼品にできる特産物の有無と、役所のPRなどに割ける人手で決まります」と言う。
「地方の時代」という言葉があちこちで語られるが、それはどの地方にとっても「バラ色の時代」というわけではない。
※週刊ポスト2017年3月17日号