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食品ロスの背景に歳時記と欠品より余る方がマシとの考え方

焼却炉行きのゴミの半分は食べ物(写真/アフロ)

 恵方巻きで盛り上がったかと思えば、バレンタイン。それが過ぎればひな祭り特売、ホワイトデー、新入学お祝いフェア…と短いサイクルで季節商品が次々と派手に宣伝され、店頭が休みなく賑わう。日本の食生活はなんとも潤っているかに見えるが、実態はどうなっているのだろうか?

『日本フードエコロジーセンター』代表取締役の高橋巧一さんは言う。

「当社では廃棄食品を家畜の飼料として再生していますが、廃棄食品は試作品の段階から寄せられます。味を確認したり、工場のラインが行程どおり稼働するかどうかを確認するために試作品が作られるわけですが、その段階からすべて廃棄です。

 たとえば恵方巻きであれば、節分の1週間前から試作品が当社に届きます。ある工場からは毎日1トンの廃棄食材が届きますが、節分の1週間前からは2トンになり、節分翌日の2月4日には約3トンが運び込まれます。廃棄食品は季節商品の“旬”前後に相当量、増えるのです」

 クリスマスにはケーキ。正月にはおせち。ハロウィンが習慣化すれば、その時期に合わせてかぼちゃや加工品など、イベントやセールのたびに廃棄食品は多様化し、増量する。高橋さんが続ける。

「東京23区を例にとると、企業が自治体の焼却炉でゴミを焼却すると1kg当たり15円かかります。当社は20~25円でリサイクルしているので、23区のスーパー等からは依頼がありません。23区の企業にとっては、焼却炉で燃やした方がコストダウンになるからです。焼却炉行きのゴミの半分は食べ物です。それを自分たちの税金を使って燃やしているのです」

 真っ赤なトマト。曲がっていないきゅうり…。スーパーに行けば端正で美しい生鮮食品がズラリと並ぶ。

「食品に対する“見た目重視”の風潮も多量廃棄の原因です。消費者は食の安全やおいしさが重要だと言いながら、購入時になると、見た目と値段を重視する。当然、店側はそういうものを並べたがり、生産者は作らざるを得ない。作るコストがかかる上、規格外となった大量の野菜や果物は廃棄されてしまう。そのコストは価格に跳ね返っているのです」(高橋さん)

◆「捨てる」を前提に供給され続ける商品

 日本には“欠品ペナルティ”や“3分の1ルール”といった特有の商習慣がある。それらがどんな不利益を生むのか。

『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)の著者で、食品ロス問題に詳しい井出留美さんに聞いた。

「卸やメーカーが納品できなかった時に、スーパーなどの小売店が課す罰金(欠品粗利保証金)が“欠品ペナルティ”です。欠品で商品棚を空けるとそのスペースが競合メーカーに奪われたり、最悪の場合、取引停止となります。

 そのため、多くのメーカーは“欠品によってそれほどの不利益が生じるなら、たくさん作って余らせて捨てた方がマシ”という意識になり、絶対に欠品しないよう、過剰に在庫を準備するのです」

 では「3分の1ルール」とはどんなものだろう?

「賞味期限を3分の1ずつに区切り、最初の3分の1を“納品期限”、次の3分の1を“販売期限”とするものです。

 たとえば、賞味期限6か月の菓子の場合、メーカーや卸は最初の3分の1内(製造してから2か月以内)に小売店に納品しなければならず、それを過ぎると納品不可となる。そして、次の2か月内(製造から4か月以内)が販売期限で、それを超えると基本的に店頭から撤去され、廃棄対象となる。賞味期限を2か月間残しているにもかかわらず、です」(井出さん)

 食べ残し量の減少を提案する『ドギーバッグ普及委員会』の小林富雄理事長は、小売店側と消費者の関係についてこう指摘する。

「“○○フェア”と銘打って商品を売り出す時、小売り側は、大量の商品を並べ、チラシに掲載し、お客さんを呼ぶ。商品にもよりますが、閉店間際に行っても欠品のない状態を保つ棚づくりをするため、販売前から売れ残りは想定内。売る側はそのコストを“広告宣伝費”と割り切っていますし、それらを負担するのはほかでもない、消費者です」

 前出・井出さんも言う。

「もちろん、日常的に必要な食品もありますが、そうではないものも常に満タンになっていないと消費者は気がすまない。その“当たり前”を変えるだけで、今100円で売られているものが80円になるかもしれません」(井出さん)

※女性セブン2017年3月16日号

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