「私は朝日新聞に勝った」──安倍晋三首相がトランプ氏との最初の会談(昨年11月)でそうメディアへの勝利宣言をしたと、産経新聞が報じた。
政権に返り咲いて以来、首相が真っ先に取り組んだのがメディア対策だった。就任してすぐの2013年から2014年にかけて、全国紙5紙、ブロック紙、通信社、そして民放キー局のトップや編集幹部と会食を重ねた。その回数は2年半で50回にのぼった。
安倍首相の言葉は敵対してきた朝日新聞だけでなく、大メディアはすべて統制下にあるという自信の表われだったといえる。
しかし、もう自分には逆らえないと安心したのか、昨年からメディア首脳との会食はめっきり減り、今年は2月2日に渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆、福山正喜・共同通信社社長らと食事をしたのが目立つくらいだ。
一方で、安倍政権のメディア統制にはっきり綻びが見えてきた。国有地払い下げにまつわる森友学園問題は朝日新聞がスクープし、民放は当初、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)、『白熱ライブ ビビット』(TBS系)くらいしか取り上げていなかったが、国民の関心が高まるとフジテレビ、日本テレビなど民放各局が競うように連日ワイドショーで取り上げるようになった。
そのうえ、現場の新聞記者たちから不興を買ったのが経産省の取材規制だ。