天皇の生前退位について、世論は「恒久制度化」を強く望んでいる(57.9%=時事通信社調べ。2月)。だが、政府、自民党は相変わらず「一代限りの特例法」で臨もうとしている。この乖離はなぜ起きているのか。『天皇論 平成29年』を上梓したばかりの漫画家・小林よしのり氏と、自民党内にあって「皇室典範の改正」を主張する石破茂氏が徹底討論した。
小林:天皇の退位問題は、民進党が皇室典範改正の方針を推し進めるなど、野党はみんな一代限りの特例法に反対です。小沢一郎さんも、与党が特例法を提出した場合は反対すると明言しました。しかし自民党内には、特例法への異論が憚られる雰囲気がある。安倍政権になって以来、全体主義的な傾向がありますからね。ところが石破さんは典範改正を主張され、わしとの対談の場にも出てきてくれた。その勇気に感謝しています。
石破:これは、先人が命を賭して守ってきた国体そのものに関わる大問題です。昨年8月8日の「おことば」で、陛下は国民の理解を求められました。陛下と国民をつなぐのは、全国民の代表たる国会議員の責務です。
にもかかわらず、自民党内には議論がない。役員会で議論をしたといっても、多忙な役員たちがわずかな時間でしっかり咀嚼して結論を出すのは、相当に難しいでしょう。役員以外の議員で意見がある者は書面で提出せよとのことでしたが、報道によれば提出した議員は全体の2割強。これは衝撃的でしたね。8割弱の自民党議員が「役員会にお任せします」というのは、実に残念です。
私自身は、恒久的に退位を認めるだけでなく、女性宮家を作り、女系天皇の可能性も否定しないという意見書を提出しました。これに明確な答えを出さないと皇室そのものがなくなってしまうという危機感がある。