普段は政治的発言を控えている民団(在日本大韓民国民団)が慰安婦問題に対して、異例の立場を表明した。本国との軋轢も予想されるなか、あえて厳しい文言を選んだ背景とは。ジャーナリストの李策氏がレポートする。
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「(少女像は)撤去すべきというのが在日同胞の共通した切実な思いだ」
民団の呉公太団長は1月12日、東京都内で行われた新年会のあいさつで、韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像についてこのように述べた。
民団関係者によれば、「この問題について、そろそろ我々が何か言うべきじゃないか、との意見は、昨年末から幹部の間から出ていた」という。呉氏はまた、あいさつ後に別室で記者会見を開き、こう語った。
「韓国国内で反発が予想されるが覚悟している。両国関係の悪化による一番の被害者は在日同胞だ」
民団はこの後、韓国政府への働きかけに乗り出す。呉氏らは同17日、韓国大使館を訪れて李俊揆大使に面会した。また2月初めには訪韓し、尹炳世外相や姜恩姫女性家族相、主要政党の代表らと面談。2015年12月に交わされた日韓合意の履行と釜山市の日本総領事館前にある少女像の移転を求めた。
これに対し、韓国メディアやほかの在日団体からは案の定、反発が出た。まず槍玉に上がったのが、呉氏が言った「在日同胞の共通の思い」との言葉だ。
日本には、民団以外にも北朝鮮系の在日本朝鮮人総聯合会(総聯)などの団体があり、韓国系でも民団に加わっていない人も少なくない。そうした人々から「何を勝手に」との声が上がるのは当然で、呉氏も誤りを認めて訂正している。