日本海に浮かぶ竹島をはじめ、領有権を巡って争いが生じることは珍しくないが、「仁義なき“境界”紛争」は国内にも存在する。
小池百合子・東京都知事がブチ上げた「東京五輪ボート会場見直し」を巡る騒動は着地点を見出せないままだが、当初、会場に内定していた「海の森水上競技場」を巡っては大田区と江東区の“争奪戦”の問題もある。
建設予定地の「中央防波堤埋立地」は大田区と江東区の間に位置し、40年以上も両区が“領有権”を主張してきた場所。五輪開催決定を機に帰属を明確にしようと協議が重ねられているが、最新状況はどうなっているのか。
大田区は取材に、「この場所は海苔の漁場として多くの大田区民が生計を立ててきた。間違いなく大田区のもの」(企画課企画担当)と主張。一方、江東区は「埋め立てに使われたのは東京都のゴミ。その運搬車が1日に5000台以上、江東区を通った。悪臭やハエの大量発生に耐えた区民の努力があり、中央防波堤の今がある」(港湾臨海部対策担当)と譲らない。解決の糸口は全く見えていないようだ。
一方、日本有数の高級住宅街である“成城”の新築マンションを巡って、隣接する自治体同士が奪い合いを展開したこともある。2000年に着工された、世田谷区成城と狛江市東野川をまたぐ場所に位置する「パークシティ成城」を巡っての出来事である。
「全8棟のうち、6棟が世田谷区、残り2棟が狛江市に建っていた(画像参照)。開発したデベロッパーは全棟を『世田谷区成城』の住所にしたほうが高く売れると考えたが、“住民税はこちらに納められるべき”と狛江市が待ったをかけた」(近隣住民)
狛江市側にある70戸だけで住民税は約5000万円になると試算され(当時)、自治体にとって決して小さな額ではない。世田谷区と狛江市が真っ向から対立した。
最終的にはデベロッパーが狛江市の街作りに協力すると提案。2002年10月にようやく、マンション全体が「世田谷区成城」の住所表示になることで合意した。かくして“狛江市の土地に住む世田谷区民”が誕生したのである。
※週刊ポスト2017年3月17日号