春先が旬の「春菊」。江戸時代の事典『和漢三才図会』に「春に花を開き、菊に似るが故」と記述されているのが名の由来。関西では菊菜とも呼ぶ。日本には室町時代に中国を経て渡来した。
春菊は葉の切り込みによって、大葉・中葉・小葉の3種に分類されるが、一般的に流通しているのは中葉。関東の春菊は「株立ち中葉」という葉に厚みがあり、茎が立ち香りの強いものが主流。一方、関西では、生育しても茎が育たず、株が横に張っている「株張り」を根から切って出荷する「株張り中葉」が中心である。
春菊はβーカロテンが豊富で、抗酸化作用により免疫アップやがん予防に効果が期待される。葉酸や鉄(貧血予防)、カルシウム、食物繊維、カリウム、止血作用のあるビタミンKなども多く含む。独特の香りはリモネンやαーピネンなどの成分によるもので、リラックス効果や胃の保護、咳止めなどに作用する。
家庭料理研究家の松田美智子さんはこう言う。
「かき揚げといえば春菊。独特の香りとさくさくした歯ごたえに春を実感します。私は、炊きたてのご飯にアツアツのかき揚げをのせ、塩とゆずこしょうを添えて、崩しながらいただくのが好き。ひと口サイズに揚げるのがポイントです」
◆春菊の【準備】
苦手な人も多い春菊特有の苦みは、茎ではなく葉に多く含まれる。加熱時間と正比例して苦みも強くなるので、加熱はできるだけ短時間に。春菊の下準備としては、まず葉と茎に分ける。そして茎は斜め薄切りにする。
春菊は生で食べられる。えぐみが少なく葉の柔らかいこの季節は、サラダなどでいただくのがおすすめ。
◆春菊とえびのかき揚げレシピ
【1】ボウルに薄力粉20g、片栗粉5gを合わせて冷蔵庫で冷やし、冷えたビール50ccと混ぜ合わせる。
【2】 【準備】を参照して下処理した春菊1/4束分、桜えび1/3カップを別のボウルに合わせ、薄力粉大さじ1/2をふるう。
【2】少量の【2】に【1】を軽く合わせ、小さめのお玉で具材をすくって、やさしく高温に熱した揚げ油に滑り入れる。油の中で散った具材は菜箸で寄せ集めながら、しっかり固まるまで泳がせる。上下を返し、約30秒で春菊を取り出す。揚げたてを塩、レモン、ゆずこしょうなどでいただく。
※女性セブン2017年3月23日号