東京・千駄ヶ谷の将棋会館と大阪市にある関西将棋会館をテレビ電話でつないで行なわれた2月27日の将棋連盟の臨時総会。報道陣シャットアウトの総会に出席した棋士の一人はこう振り返る。
「総会では、渡辺明竜王が他の棋士から“まだ三浦(弘行)九段を疑っているのか”と詰問されるような場面もあって驚きました。今回の騒動が大きなターニングポイントを迎えたと思う」
この日の総会は、トップ棋士の一人である三浦九段の「対局中のスマホ不正使用疑惑」を巡り、対応を誤った理事たちへの解任動議を採決するために開かれた。連盟関係者が説明する。
「昨年10月に疑惑が浮上したきっかけは、三浦九段の行動に疑問を抱いた渡辺竜王が理事たちに連絡を入れたことだった。理事たちは混乱を避けるため、三浦九段の年内出場停止処分を決めたが、昨年末、連盟が設置した第三者委は『不正の証拠はなかった』との結論を発表。谷川浩司会長が辞任に追い込まれ、2月6日に佐藤康光新会長が選出された」
ところが新会長が選出された総会で、「残り5人の理事も責任を取るべき」との解任動議が28人の正会員(棋士、引退棋士ら)の署名とともに提出された。
それを受けて改めて今回の臨時総会が開かれ、専務理事の青野照市九段、常務理事の中川大輔八段、片上大輔六段の3人が解任されたのだ。
この結果は、解任賛成派にとっても意外だったという。28人のうちの一人である田丸昇九段はこういう。
「当初は、たとえ解任動議が否決されても過半数に近い賛成票が集められれば、執行部の襟を正すことができる、というくらいに考えていました。それが3人も解任ですからね。旧執行部に対して思った以上に多くの棋士が批判的だったわけです。嬉しい誤算でした」
投票結果は僅差だった。出席者は216人(委任状含む)で過半数ラインは109票。「中川八段、片上六段は数票差での解任だった」(前出の連盟関係者)という。
まさに連盟が真っ二つに割れた形だが、たとえ僅差でも3人が解任されたことの意味は大きい。